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第1話 彪(アキラ)
俺の嫌いな奴のその声で名前を呼ばれて、振り返って、その瞬間自分の犯した失態に気付いてしまった。
悪態を吐くことも忘れて、俺は戦慄する。文字通り体中の毛が逆立った。尻尾が、耳が、俺のコンプレックスである斑の模様が……
「っ!!!!」
息を呑み込んでそれを仕舞い込む。視界が揺れた、頭が痛い……眼が変化したせいか?
でも、なんで、なんでなんでなんで……っ?!
あいつは息を吞んで、そしてゆっくりと口を開いた。
「お前……まさか、獣人……?」
あいつは、芹人はそして、俺に向けて苛立たしいあの笑顔を向けてきた。
でも俺は腹立つよりも前に、何よりも前に、恐怖を覚えた。……種族を隠して、虐げられないようにとびくびく怯えて、誇りだって殆ど棄てて、なのに、よりにもよって芹人にバレただなんて……!
俺はどうなる? これからどうなる?
獣人だってことがバレたら、俺はこの仕事を失うだろう。いや、クビには為らない。ただただ圧力を掛けられて、この地位を失って、そして晒し者にされる……そんなの、耐えられない!
「っ、芹人、何でもしてやるから全部黙っててくれ、後生だから……っ!」
俺には妹も親も居るんだ! 俺が働き口を無くしたら野垂れ死ぬしか無い……俺はあの二人をそんな目に遭わせる訳にはいかない!
芹人は必死になって懇願した俺に少し驚いたのか目を一瞬見開き、そして口元を歪めた。ぞわぞわと鳥肌が立つ。恐かった、でも逃げられなかった。
「良いよ。まあその代わりさ、今日の仕事上がり……ちょっち付き合えよ」
……求められているのは許可では無く、YESと言う返事だけ。俺はそれが解っていたから、すぐに頷いた。
……後悔は、もうその時には遅かった。文字
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