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Trac01 Bad Day①

『ーーーツいてない日だったのさ』 ダニエル・パウター/Bad Day 金曜日の夜はどいつもこいつも浮ついてやがる。 駅の入り口で円柱形の柱に背をつけながら、馬鹿みたいに笑う大学生だの、もうクタクタって風態ながらも何処ホッとした表情のサラリーマンだの、すでに出来上がってる酔っ払いの集団だのを流し見る。 まあ、イヤホンを耳に突っ込みゲイアプリで男を漁る俺も似たようなもんだ。 アプリを開くと、名前、写真、ウケかタチか、恋人募集か、イチャつくのがいいか、ヤルのがいいのかなんかを書き込んだプロフィールがズラリと画面に並ぶ。 メッセージ機能で相手に目的地に着いた事を伝えた。 ウォークマンのスイッチを入れると切ないピアノの音色にダニエル・パウターの柔らかい声が乗っかって、ガチャガチャした景色が音楽に包まれ途端に優しいモノに見える。 やはりBGMというのは大切だ。 ストレスにささくれ立った心が少しだけ凪ぐ。 携帯の時計を確認すると、午後9時。 そろそろ時間だ。 行き交う人の流れに目を凝らすと、流れに翻弄される落ち葉のようにくるくると回転しながら誰かを探している風の人物を見つける。 ハリーポッターみてえな癖のある黒髪に丸い眼鏡。周りの人間より5センチくらい背が低い。目印の深緑の半袖Tシャツ。 今日の相手はたぶんコイツだ。 BGMに耳を傾ける。 ハリーポッターに似てるし、仮名をダニエルとしよう。 交差する人間たちと、未だにアスファルトから立ち昇る熱気をかき分けてダニエルに近づく。 すると、そいつはピタリと動きを止めた。 「あの、"鈴木"さん、ですか?」 「そ。アンタいくつ?」 「二十歳です」 「お、ギリギリセーフ」 ダニエルはくりくりした目を怪訝そうに細める。 「俺、未成年とはセックスしないから」 ダニエルは顔を赤くして、目線だけで周りの様子を伺った。 何やってんだコイツ。それが目的だったんだろうが。 「ホテル行こ」 「はっ?!えっ?!」 「時間勿体無いし」 ほら、と俺はそいつの手を引いて、いつものラブホテルに向かった。

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