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第1話 人と僕の日常
家から徒歩10分の道をてくてく小さな歩幅で歩き登校する
天気もよく、風もなく、でも少し涼しい
新年度に入ったばかりのこの頃
特に一緒に行くような友達も、途中で挨拶をしてくれる人もいない
いつもと同じ道を歩いて、いつもと同じ学校に入り、いつもと同じ部屋の席に着く
そこに着いても誰も僕を気にすることはなく、いつも1人なのが僕だ
学校や近所で何か言われているわけじゃない
どこか僕の知らないところで言われてるかもしれないけど、直接いじめを受けているわけでもなく、平凡といえば平凡な毎日
ただ、僕には人の平凡より少ないものがあるだけで僕にとってはこれが僕の平凡な日常だ
僕の人の平凡より少ないもの………それは、
“友達 ” “ 家族” “ 愛情”
でも、僕自身それがなくて困ったり辛かったりすることはなく
ただそれがあった時の日常を想像して羨ましく思う…そんなモノたち
まぁ、僕の周りの人が持っていたら僕だって子供なのだから欲しくなってしまうのは仕方の無いことだと思っている
周りの子の持っているお菓子やゲームが欲しいのと同じ
それを持っていない僕はとてもつまらない奴なのかもと思うし
人から見たらそうだと思う
きっと、それらがあれば少しは僕の日常も人の平凡と同じくらいのものになったりするのではないだろうか
しかし、それを僕が手にするのはとても難しいし、きっとそれらを僕が持ったら溢れて手から零れてなくなってしまう
今の人より少ないものが多い状態に戻るのがオチだ
だから、だから…僕は、怖いんだ
人が当たり前のように持っている日常を、僕が人と同じように手にすることができた時を想像するのが怖い
もし現実になったとしたら、きっと僕は毎日なくならないか、ちゃんと手の中にあるか不安で心配で眠れなくなるだろう
そんな臆病な奴が僕、水瀬 佐久(ミナセ サク)
家から徒歩10分の高校に通う2年生の16歳
容姿は地味で小さく、目立たない
特に趣味もなく、特技もなく、何もない平凡な日常を過ごす高校生
それが僕だ
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