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1『春待ち庭』

 暇を持て余し、ダラダラと過ごす布団の中から手を伸ばした。厚いカーテンの裾野に覗く、白銀の庭に目を細める。 「――――……さみぃ」 「ん」  朝日の走る丸い肩が毛布に隠れた。  カーテンを下げ、薄暗い部屋に夜を呼ぶ。  馴染んだ毛布は厚く軽く暖かく、背を向けた男のうなじには、二つの痣と赤い歯型。  嫌がる体をいたぶりたい。狂った俺の性癖と、きみの興奮のスイッチは相性が良かった。 「ふ……ん」 「熱い」  肌をまさぐり、大きな造りの隆起を辿る。ひくりと震えた腹から下肢へ、指を滑らせ意思を伝える。  荷物は部屋に転がったままだ。ダンボールを脇に布団に包まり、第一の欲望を満たす。 「…………んン」  静かな興奮はやまない。無自覚に身を捩るきみだけが、衝動を止める鍵を持つ。  壊せないほど愛しい。自分だけのものにしたい。二人で過ごす休日は、時間の不足に溜め息が出る。だから、これが最善だ。  この春、俺たちは家族になる。

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