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2『旅立ちの日に』

同棲を始めて3度目の春。 今年はえらく暖かで、早過ぎた桜ももう散ってしまっていた。 旅立ちに相応しく、桜吹雪の中を歩き出したかったのに。 「…よし、終了。」 昨日まで恋人男が、パソコンの電源を落とした。 こんな日にまで仕事かよ。 その様子を床に座り見つめていた俺は、のそりと立ち上がると、すっからかんになった空間に視線を這わせた。 床の真ん中が、少しだけ色が変わったように見えるのはラグの跡。 あぁ…あそこにお気に入りのグリーンのソファーがあったんだ… 隅の少し凹んだ所は、シンプルな机を置いていたんだっけ。 何もないはずの部屋のあちこちに、愛し合った二人の姿が浮かび上がる。 甘く掠れた声さえ聞こえてくるようだった。 そう言えば…アイツからの告白も、口付けも、お互いの熱を交わし合ったのも…全てこの部屋からだった。 「さ、行くぞ。」 お前に感傷という言葉はないのか。 黙ってスーツケースを持ち、靴を履きかけた俺に影が覆い被さってきた。 一頻り口内を蹂躙した元カレは、微笑みながら言った。 「これからもよろしくな、!」 元カレから夫に昇格した男に満面の笑顔を咲かせると、見せつけるように薬指の指輪にキスをした。

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