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「ああもう、どうしてくれんだよ…」
どうしてくれる、と言われましても…。
――事の発端はつい先ほどのことである。今日提出の課題プリントをやり忘れていた俺は、先生が今日中にやれば大目に見ると言ってくれたので放課後に済ませて職員室まで提出してきた。そうして寮に帰ろうかと廊下の角を曲がったところで…床にへばりついている、見るからに不審な生徒を見つけた。
ていうかあれ、生徒会長じゃんか。
それによく見ると床にへばりついていると言うか、何かを探しているっぽい。その顔があまりにも焦っていたので何か大切な物でも無くしたのかと、俺は少し急ぎ足で会長の元へと歩み寄る。
そしたら、だ。
「あぁーーーーッ!!!」
突然此方をばっと振り返って会長が大声で叫ぶので思わずびくりとした。張本人である会長はわなわなと震えて此方を指差している。
…え、俺何かしたっけ。
「お、おまっお前っ、今踏んだだろ…!」
「踏ん…?」
一歩前に出していた方の足を上げてみれば確かに何か踏んでいる。透明の…何だこれ、ガラス片?
「俺のコンタクトが…!!」
「コンタクト?」
「俺は耳だけは良いんだよ、パキッて音がしたんだ!お前絶対踏んだだろ足元に割れたコンタクトあるんだろ!」
見えなくても分かる、とぎゃいぎゃい喚く会長。何か半ベソかいてないかあの人…?
「あの、ちょっと落ち着いてくださいよ。今そっち行きますから、」
「っ!ま、待てっそこを動くな!!」
「は?」
ぱき。
会長に制される前からもう既に一歩踏み出していた足の下で乾いた音がした。おそるおそる足を上げると…そこにはさっき見たのと同じ、ガラス片のようなものが。
「………………」
「………………」
「……どっちも落としてたなら早く言ってくださいよ…」
「言う前にお前がこっちに来てしまったんだから仕方ないだろ!ああもう、どうしてくれんだよ…」
そうして、話は冒頭へと戻る。
はぁぁ、と深く溜め息を吐いて項垂れる会長の瞳には涙の膜が張っていて、瞬きすれば今にも溢れ落ちそうだ。やばい…こりゃもう半ベソじゃなくて完全にベソかいてるぞ会長。
これにはさすがに俺も罪悪感がわいてきた。というかこれで平然としてたら人としてどうかしてるしな、俺。
相変わらずベソをかいている会長を見た後に、俺は周りに人がいないか確認してからまた彼を見て口を開いた。
「…責任持って寮まで送りますから」
「…は、」
ぽかんと口を開けて俺を見上げる会長に思わず笑ってしまう。男前は呆けた顔をしても、やはり男前のようだ。
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