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悲劇のヒロインよろしく座り込んでいた会長は、見送ることに同意したのか腰を上げて立ち上がる。
放課後のこの時間なら校内に生徒はほとんどいないし、寮に着いて会長とすぐに別れれば特に俺のことがバレることもないだろう。ちょっと隣を歩いて道を教えてあげるだけなのだから、さして問題はないはず。
…そう思っていた俺が甘かったのだろうか。
「よし、んじゃ行くか」
「…あんた誰に話しかけてんすか、それ消火器ですよ」
「あ、ああ…すまん。じゃあ気を取り直して行っぶふっ!」
「何で壁に突進するかな…普通分かるでしょうが」
「失礼だな!俺だってコンタクトさえあれば…!」
「だからそれ消火器だっつうの。ハァ…わざとやってんですか会長」
それならお茶目で済むけど本気でやってたらギャグ漫画も真っ青だぞ。
「テメェ、俺が人をからかうような人間に見えるとでも言いてぇのかよ!」
やべぇ本気だった。
「もういい。お前の助けなんざいらねぇ、俺は一人で帰る!」
俺の態度に憤った会長は不機嫌そうな顔をして、勝手に一人で先へと進んでいく。そりゃ帰れるならいいけど、と呆れながら会長の方を見て、思わず声を上げた。
「ちょ、そっちは…!」
会長が向かっているのは階段で、だというのに目の悪いあの人はその先が普通の道だと思っているのか歩く速度を緩めない。がくん、と会長の体が傾いだ。
「うわっ!?」
「くそッ…!」
慌てて会長の腕を力一杯引き寄せる。その反動で彼が勢いよく此方に向かってきて、そのまま二人共床に倒れこんだ。
「ってぇ…」
もちろん俺は会長の下敷き。まじでいいことねぇな今日…。
会長は俺が下にいることに気づいて慌てて顔を上げる。
「す、すまんっ!大丈夫か、怪我は…!?」
「あー…大丈夫なんで、とりあえず退いてくれますかね」
そう言うと会長がすぐに退いたので、立ち上がって制服の埃を払った。会長は俺に迷惑をかけたことを反省しているのか、傍で気落ちしている。俺はそんな彼の元へ歩み寄って、背を向けてしゃがみこんだ。
「はい」
「えっ…な、何だ?」
「おんぶ。寮まで連れて帰りますから」
「なっ、そこまでさせるわけには…!」
「あんたを歩いて帰らせると日ぃ暮れますよ、その方が迷惑かかると思いませんか?」
別に怒ってるわけではないので笑いながら言うと、その気配が伝わったのか会長がおそるおそる俺の両肩に腕を回した。
「よし、行きますか」
背中に乗せた会長を連れて、俺は校舎を後にした。
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