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第3話
しばらくして、腕の中で響いてた嗚咽が止まった。
その代わりに聞こえてきたのは、静かな寝息。
「あれ、渚寝ちゃった?」
「みたいだな」
「泣き疲れたんだね」
夏生が渚を覗き込んで、やっぱり寝顔かわいいな、なんてデレデレしている。
うん、それは兄ちゃんも文句なしに同意だ!
それにしても、こんなに泣いた渚を見たのは久しぶりだ。
もしかして、兄ちゃん怒りすぎちゃったか!?
い、いや、渚だって高校生になったとは言え、まだ未成年だ。
ここは兄ちゃんとしてきっちり説教して正解なはずだ!
でもなんで急にタバコなんて……いつもはそんなことする子じゃないのに、しかも、兄ちゃんに隠れて……結局、肝心の理由は聞けずじまいだったな。
こんなんじゃ、兄ちゃん失格だああぁぁぁーっ!
「兄さん」
「なんだ、夏生」
「渚ね、ああ言ってたけど、悩んでたんだと思うよ」
「え?」
「一週間くらい前かな。同じクラスの子に『お前はチビでガキだ』って言われたんだって」
「なっ!?」
「それで大人に近付きたかったんじゃないかな」
まったく、こんなにかわいい渚にそんなこと言ったのはどこのどいつだ。
そんな不埒な輩は兄ちゃんが懲らしめてやらないと!
「男の子なんだから、身長なんてすぐ伸びるのにね」
「そうだな」
「渚ね、去年だけで5センチも背が伸びたんだよ」
「な、なんだって!」
「俺たちに追いつくのも案外すぐかもね」
「な、なな、ななな!に、兄ちゃんは許さないぞ!このかわいい渚がでかくなるなんて!」
今みたいに抱きしめてやれなくなるじゃないか!
そんなことになったら、兄ちゃん悲しくて悲しくて泣いちゃうぞ!
だから。
だから!
「もうちょっと、そのままの渚でいてくれよな……?」
愛する兄ちゃんのためだと思って、な!?
fin
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