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 風雪が、さらに勢いを増してきた。  すでに膝まで積もった雪に足を取られながら、相川 凌介(あいかわ りょうすけ)は途方に暮れていた。 「こんなことならカフェのマスターの言うことを聞いておけばよかった」   凌介は、この高原へと登る前に立ち寄ったカフェを思い出していた。 『高原とはいえ、山には違いありませんよ。山の天気は変わりやすい。またの機会に、しっかりした準備をしてからお行きなさい』  アマチュアカメラマンの凌介は、冬の高原をぜひ一度カメラに収めて見たかったのだ。  ようやく仕事がひと段落ついて、念願の撮影旅行に繰り出した。  今回を逃したら、いつまとまった休暇が取れるか解らない。  またの機会に、なんて悠長なことは言っていられなかった。  体が重い。  命より大切な、と日頃は思っているカメラや機材が、今は邪魔ものだ。  目がかすんできた。  もう、一歩も動けない。  いっそ、ここに倒れこんでしまおうか、と思った矢先、いつのまにたどり着いたのやら、木造の山小屋が目の前にあった。  幸い、灯りがともっている。 「天の助けだ」  凌介は力を振り絞ると、山小屋まで必死になって歩いた。

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