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You are beautiful⑤

けど早々にチャンスは訪れた。 サムとくだらねえ話しをしていると、プラットホームに入ってくる電車の窓からイケメンが見えた。取り巻き達はいない。 サムはイケメンの乗る車両のドアをじっと見つめる。両手で握りしめていたスマホの画面は少し曇っていて、それをポケットにしまう手は震えていた。 コイツは本気だ。今更本当にいいのか?なんて野暮なことは言えない。 ドアが開く。乗客が溢れ出す。 サムは、まるで戦場に向かうように一歩を踏み出した。 が、イケメンは不意に車両を振り返った。 そして、エスコートするように制服姿の女の手を取った。そのままプラットホームを横切り、階段を上っていく。笑みを浮かべて手を繋いだまま。 サムは石像にでもなったかのように突っ立っていた。 「残念だったな」 俺はそれだけ言って、イヤホンを付けてスマホの画面を点けた。 項垂れるサムの肩が震えて、床で水滴が弾けるのは見ないフリをした。ほっとく方がいいと思った。 電車が来ると、俺はそれに乗り込んだ。 じゃあな、という別れの挨拶の他は何も言わなかった。 また会う事になると思っていたから。 でもその日から、サムの姿はぱったり見かけなくなってしまった。サムはきっとイケメンに会うためだけに、あの時間、あの場所にいたんだろう。 ま、こればかりは仕方ない。 俺はいつものように電車に乗り込むと、例のイケメンがいた。女と何か喋っている。 「ここにさ、いっつもベンチに座ってたヤツがいたんだよね」 イケメンが言った。 「俺と同じゲームやっててさ、あれマイナーなやつだから誰もやってなくてさ。 ちょっと話してみたかったな」 俺は溜息をついた。思うようにいかないもんだな。 サムがもう少し粘っていれば、この事を話してやれたかもしれないしイケメンの方から声をかけられていたかもしれない。 本当に間の悪いヤツだ。 サムにまた会えるかどうかなんて分からないし、探して慰めてやるほどお人好しじゃない。 でも次に会った時には、せめてそのゲームのアプリは消すな、とでも言ってやるつもりだ。

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