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You are beautiful④

「それで、その電車逃しちゃったんですか?」 だから遅れてきたんですね、とファミレスで俺の向かいに座る祐次は可笑しそうに言う。 祐次はアプリで知り合ったヤツだ。もちろん身体の関係がある。でもただそれだけだ。 名前の読みはユウジと一緒だけど見た目は全然違う。ユウジはシュッとしたイケメンだけど、コイツは俺より背が低くて童顔だし歳も1つ下だ。服装は野暮ったいがダセエ丸眼鏡はやめたみたいで四角いフレームの黒縁眼鏡に変わっている。 「僕も覚えがあるな。高校の時、カッコいい同級生がいたんですよ、吹奏楽部に。サックスを演奏してるのがすっごくサマになってて」 祐次はミートソースのかかったドリアを口に運ぶ。 自分の分をさっさと食べ終わった俺は、ふぅん、と水を飲みながら返す。 ちょっとわかる気がする。バンドをやってた頃、ステージのライトを浴びながら生き生きとした表情でギターを鳴らすユウジの姿を思い出した。 「でも、高校生の時って、そういうのめちゃくちゃ悩みますよね。周りに言える人もいないし」 祐次は目を伏せる。 「だから、鈴木さんが声をかけてくれて随分救われたんじゃないですか、その子」 「くだらねえ話しかしてないんだけど」 「そういう話題を気にせず話せる人って貴重だと思いますよ」 祐次はニッコリ笑う。 「僕も高校生の時に鈴木さんみたいな人に会いたかったなあ」 「買いかぶりすぎだろ」 「鈴木さんいい人だと思いますよ」 育ちのいいお坊っちゃん然とした笑顔で言う。背中が痒くなるようなセリフに落ち着かなくなって伝票を手に取った。 「もう行くんですか?」 祐次は口に水を流し込んで急いでカバンを手に取る。 「食い終わったんだろ」 「あ、はい。そうですけど・・・」 会計を済ませて外に出る。 この時間は大分涼しくなったけど、昼間の暑さがアスファルトにこびりついてまだ空気中を漂っているようだ。 祐次は歩きながら、もう少し話していたかったな、とネオンの目立ち始めたファミレスを振り返る。 「ホテルで話せばいいじゃねえか」 「それどころじゃなくなっちゃいますよ」 声のボリュームを下げて顔を背ける。 「最近、すぐホテル行っちゃうのもったいないな、って思うんですよね」 そうか?俺としてはセックスする時間がなくなる方がもったいないと思う。 「で、行かねえの」 「行きますけど」 祐次はもっと声と身体を小さくして呟く。 「散々ヤッてきたくせに」 「な、何回目でも照れますよ、鈴木さんが相手だと、特に」 祐次は薄暗い中でも分かるくらい顔を赤くしていた。ハジメテの相手ってだけでそんなに気にするか? 「えっと、高校生くん、うまくいくといいですね。 せめて悪い方に行かないといいですね」 照れ隠しなのか祐次の口はよく回る。 「無理だろ、相手はノンケだし」 うん、やっぱりノンケはやめた方がいい。 絶対に。 本当に、ろくな事にならないから。  せっつくような真似をして悪かったかな、とちょっと思った。

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