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You are beautiful③

案の定、次に顔を合わせた時には気不味そうな表情をしていた。 「アンタ、彼氏いたの?それとも、その・・・」 なんかゴニョゴニョ言ってて聞こえなかったけど、ウリでもやってんのかと疑われてもまあ仕方がない。 ゲイアプリの事を教えてやると、存在は知っていたけど手を出した事はないと言っていた。 「そっかあ。俺もやってみようかな」 サムは目を輝かせた。 「最中に首絞められたり、プロフ詐欺の汚いオッさんに当たったり、口にクスリ突っ込まれて無理矢理ヤられたりしてもいいならやってもいいと思う」 「いや、普通に彼氏作りたいだけなんだけど」 サムの顔が引きつる。 「ていうか何その話。恐っ」 「ん?ハズレ引いた時の話」 「え、マジなの、それ」 うわあ・・・とサムは俺から離れるように身を引く。 「アンタすげえな、それでもアプリやってるの?」 「確かに無理矢理とか好きじゃねえけど、そもそもセックスしに行ってるんだし」 「うわあ・・・」 ちょっと付いていけない、とサムはアプリをインストールせず画面を閉じた。 「もうちょっと考えてみる」 「そうだな。それにバレたら物凄く面倒な事になるぞ」 「え、バレたの?それってアプリの事?ゲイって事?」 「両方」 「うっわ最悪だな。俺、未だに誰にも言えてないし・・・」 サムの目線も声も沈んでいく。水色の制服と画面の暗くなったスマホに影が落ちていった。 軽やかな音楽とともにアナウンスが流れた。 それが重くなりかけた空気を払拭し、サムは顔を上げる。目の覚めるような金属音を響かせながら、電車がゆっくりホームに入ってくる。 「お」 「あっ」 俺とサムが声を出したのは同時だった。 イケメンが、一人で降りてきたからだ。 サムは口を開けたまま固まっていた。俺はサムのスポーツバッグを蹴る。そしてイケメンの方に顎を動かした。サムはハッとしたが、イケメンはもう乗客に揉まれながら階段を登って行くところだった。 「このヘタレ」 「だって、急だったから」 サムはうな垂れた。 「でも、今度一人でいたら、声をかけてみる」 スマホを握りしめる手に力が入っていた。

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