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14『1と3分の2』

明けない夜は無いと云うが、夜を夜のままで。冬を冬のままで終わらせる方法が、ある。 「彼」もその一人であった。  うつ病と同性愛をカミングアウトして入社した社員がいる、と聞いたとき、俺は内心「いちいち言わなきゃいいのに」と思った。うつ病は障害者雇用があるからまだ分かるが、なにも同性愛者です、などと。うちはLGBTフレンドリー企業ではない。  だがヒアリングのため「彼」に電話をし、連絡先を交換してから、カミングアウトの理由が分かった。 「彼」は、あまりに素直すぎ、優しすぎる人間だった。  隠し事が出来ない。嘘がつけない。僅かな淀みも無い清らかな水のようだった。言いたくないことは言わなくて良い、と伝えても、「耐えられないんです」と電話の向こうで泣いていた。  だがいくら清らかさを保とうと、水は、たった一滴の悪意で濁る。 「『彼』はここにはいません。プライドパレードで会おう、そう約束した冬の夜に、天国へ行きました。明けない夜は無い、It Gets Betterと言いますが……そう出来なかった人がいることも、どうか……どうか、覚えておいて、くださ、い」  協賛企業代表  株式会社○○ 人事部 ××

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