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13『ブランコ』
夢を見ていた。
小さな白いブランコに二人乗りで、カズが座って俺が立って漕いでいた。
その乗り物は漕いでも漕いでもちっとも前に進まなくて、俺は焦っていて。
必至で漕ぐのだけれど、ブランコはその場に揺れるだけ。
カズの顔は見えなかった……
「あれ、起きた?」
「いや、腕がちょっと」
咄嗟に腕枕のせいにする。
お互い休みが合わないから二人で夜を過ごすのは三か月振りだ、穏やかに居たい。
カズが、俺の左腕から頭を持ち上げた。
「交代しよ」
隙間を作って俺の腕を下ろさせ、俺の頭を動かして右腕を差し込んでくるカズ。
肩を押されてカズに背中を向けると、カズは左腕を俺の腹にまわして俺の背中を胸にぴたりとくっ付けた。
……ああ、ブランコは前に進まなくていいんだ。
俺達のブランコは、二人で漕いでいる。
メッセージと電話と性処理みたいな短い逢瀬を繰り返す日々がまた始まるけれど……大丈夫。
次に一緒に寝られる時は、暑くてこんなにはくっ付けない頃になるだろうか。
カズの体温を全身で感じながら、もう一度目を閉じた。
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