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12『ミモザ』
「ずっと、友達でいような」
イヤや、言いたかった。
「しゃーないな。お前、寂しがるから友達したるわ」
最後までスキを、よう言わんかった。
引っ越しの餞別にくれた黄色い弁当箱、お揃いやって言うてた。
校舎の裏庭で食う昼メシ、旨かったやん?って。
離れても、昼メシは一緒に食おうな、って。
顔に似合わんことすんなやって言ったけど、泣きそうんなった。
三丁目のコンビニを曲がったら、商店街の二軒目の花屋が恭兵んち。
「消しゴム、買うの付き合えや」
心臓がトクンと跳ねた。
だって今日、学校にサラの持ってきとったやん……。
一歩が重い。
百と六十四歩かぞえて、シャッターの半分降りた店の前に辿りつく。
通りに伸びた灯りの奥で花の香りとカレーの匂いがぶつかっとった。
「旨そうやな」
サヨナラの代わりに言うたら、
「ちょお、待ってて……」
恭兵はクシャミした後みたいな顔して笑った。
西あかり、日が長くなったとアーケードにポッカリあいた穴から空を見る。
持って行きと、胸に飛び込んできたミモザの黄色。
「いつか、おかずも、お揃いにしような」
その意味がわかったのは新しい街へ向かう新幹線の中。
「両想いとかアホちゃうか……」
花言葉は、
『秘密の恋』
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