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1『春景色』
柔らかな木漏れ日の下で空を見上げている彼に勇気を出して声をかけてみた。
「あの……何か見えますか?」
僕の声に驚いて肩を震わせ、勢いよく振り返った彼の瞳は大きく見開かれていた。
「あ……。スミマセン」
僕が俯くと、彼は細い息を吐きながら強張った体の力を抜いた。
「――お前。毎日、俺のこと見てたろ?」
今度は僕の体が緊張で強張った。
「す、スミマセン。そんなつもりじゃ……」
僕の言葉を遮るように、彼は笑いながら手をゆらゆらと振った。
「仕方ねーよ。春だもんな……」
「え?」
「お前、気づいてないの? それとも……初めてか?」
僕は意味が分からずに小首を傾げた。彼は立ち上がると、僕の唇に触れるだけのキスをした。
ふわり……優しい太陽と微かに漂う海の匂い。
「んっ」
ぎゅっと目を閉じて、短い舌で彼の唇を舐めた。
「可愛い。それって俺を認めてくれるってこと?」
すっと細められた瞳に僕の心臓がキュンと鳴った。
「いい匂い……」
彼の鼻に頬をよせて口元を綻ばせる。
温もりに懐かしさを感じるのは、遠い昔、恋人同士だったから?
運命が巡り合わせる、僕たちの恋の季節。
互いの尻尾を絡ませて甘い声で囁き合おう。人間には分からない愛の誓いを。
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