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2『夏を乞う』

桜の季節にハルが死んだ。 俺は廃墟のように真っ暗なハルの家の前で泣いた。 きっとハルの家族も今、あの暗闇の中で彼の死を悼んでいる。 せめて灯りのひとつでもあれば俺もそこに混じって一緒に泣く事ができたのに。 虚ろな心を抱えて自宅に戻った俺は、リビングからの光に気づいて驚いた。 誰だろう。 訝しみながら室内にそっと足を踏み入れて……俺は立ち尽くした。 「どうして……」 言葉を失った俺に、ハルがニコリと微笑んだ。 「お帰り」 幽霊だろうか。 でも、幽霊でもいい。もう一度会えて嬉しい。 俺はハルにしがみついて泣いた。 窓から見える夜桜が、奇跡のように美しく揺れていた。  *** 春が来る度に彼は恋人の姿を探す。 ハルが死んで五年。既に空き家となった場所を訪れては、悄然と帰ってくる。 そして部屋に居るハルを見て、子どものように泣くのだ。 ハルの双子である俺の存在は、彼の中から消えている。 俺に縋りついて泣く彼は可愛い。 この存在を手に入れるために俺は、片割れを葬ったというのに。 結局はハルに、心を奪われてしまった。 俺は泣き疲れて眠る彼の髪を撫でながら、窓の外の桜へと吐き捨てた。 「さっさと散れ」 春を象徴する花が、不気味にざわりと揺れていた。

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