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16『回春』

「暖かくなる頃には、よくなってくるかと思います」  そう聞いていたというのに、なんの変化も無い。同じ部屋で寝起きしていた他の患者は、一人は年も明ける前に静かに去り、一人は雪解けと共にここをキラキラと卒業していった。窓からの日差しに温度を感じ始めた今日、残っていた一人も迎えが来るのが待ち遠しいのか朝からソワソワしている。  僕はここに取り残されるのが確定していた。ずっと続いている咳も治まる兆しは無いし、発作の周期も痛む箇所も何も変わってない。好転を期待して経過を尋ねても、毎回医師に苦笑されるだけだった。  そんな僕の唯一の変化といえば、今朝処方された薬がいつもと違う物だったという事だけだ。  夕方に差し掛かる少し前、遂にこの病室は僕だけになった。  なんの気配も無い静けさに寂しさを拗らせて布団に籠もること数時間、夕飯と共に待ちわびた面会者がようやくやって来る。 「髪、切った。あと、スーツ…」 「あぁ、今日が初出勤」  いつもとは違って見慣れない大人びた姿の彼を見て、なんだか別人のようでついソワソワしてしまう。 「そういえば、お前今日は全然咳してないな」 「……あ!」

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