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18『桜占い』

「来る、来ない。来る、来ない。来る……来ない……」 庭の外にあるまだ若い桜の木。 はらはらと散る花びらを眺めながら占いまがいなことを呟いてみた。 希望とは裏腹で心が沈んでいく。 あの人の隣で目覚めた日ほど気持ちが高揚したことはない。 あれから数年。 柔らかく微笑みながら髪の毛を撫でてくれた感触が薄れ始めてしまった頃──「──!!」 呼ばれて見る桜の木の下。 舞い散る桜の花びらの中に立つ見覚えのあるシルエット。その人は手を握りしめながらこちらに来ると、それを広げながら「来る」そう言った。 そよ風に乗った桜の花びらに包まれながら視線が合えば、どちらともなく顔を近づけキスをした。 「待たせてごめん。もう一人にはさせない」 その言葉が心を温め気がつけば涙が溢れていた。

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