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第九章・11

 冗談だ、と伊織は笑い、向かってきた駿を引き寄せ口づけた。 「私も、あんなことをしたのは初めてなんだ」  何度も何度も軽いキスをしながら、伊織は甘く囁く。 「なぜだろうね。駿と一緒だと、いろんな新しいことを試したくなる」  今も、とても昂っている。  そんな風に話す伊織に、駿はうっとりと身を任せていた。  駿の身体にキスを落としながら、伊織は昼間の出来事を思い出していた。  全く、驚いた。  痴話喧嘩など、生まれて初めて見たのだ。 『お引き取りください、火曜日の人。今日は、金曜日です』  凛とした駿の言葉は、ただの従者の色を越えていた。  僕が、伊織さまの恋人なんです。  そんな、宣誓のような響きを持っていた。

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