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第十章・19
「駿は、アイスティーを淹れるのが巧くなったな」
「そうですか? ありがとうございます!」
「でも、まだまだだ。せっかくの茶葉の香りが飛んでいる」
「今度は、がんばります!」
……。
え?
「今、何て言ったんですか?」
「……嬉しい、と言ったんだ」
二人で、グラスを合わせて明るい音を奏でた。
特別な日も、何気ない一日も、こうして君と共に歩んでいくと楽しいだろうな。
伊織さんが傍にいてくれれば、辛いことのあった日も溶けて解れて消えていくんだろうな。
伊織の卒業という節目を迎えた二人だったが、明日も明後日も自動的にやってくる。
そしてそれは、かけがえのない一日一日になるのだろう。
「おいしかったな。駿、もう一杯欲しい」
「はい」
グラスの氷が、澄んだ音を立てた。
それはまるで、チャペルのウェディング・ベルのようだった。
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