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第1話

 籠から小鳥が逃げ出した。    一度大空へ羽ばたいたソレを捕らえて籠へと戻したけれど、外の世界を知った小鳥は、また逃げようと足掻き始める。    鍵はこちらが持っているから、何をしても無駄なのに。  飛ぼうとすれば檻にぶつかり、綺麗な羽が傷つくのに。  だから――    外の世界で出会った相手がわざわざ迎えにやって来たから、傷だらけになった小鳥を籠から出して外へと放った。  情をかけた訳じゃない。  自分に懐かぬ小鳥なんて、もう要らないと思ったから。  自分のために鳴かないならば、飼っていたって意味がないから。  だから心は痛まない。  ただ、酷く、空虚なだけ。 【暁闇に小鳥の囀る】 (あかつきやみにことりのさえずる)

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