175 / 188

第176話

「暁は、俺が叶多の話をすると胸が痛いって言ってたけど……俺だって同じだ」  泣かせたい訳ではないから、あやすように背中をさすり、啄むようなキスをしながら「だってそうだろう?」と囁きかけた。  唯人は暁が叶多と会うのを禁止していない。  本当は……自分以外の人間と深く関わって欲しくないけれど、叶多と暁が接点を持つよう仕組んだ経緯がある手前、もう会うなとは言えなかったし、なついている暁を見ると無理強いするのも(はばか)られた。 「別に、暁と叶多の間に何かあるなんて思ってないけど、俺よりも叶多に心を開いてるって思えば嫉妬するし、意地悪だってしたくなる」 「え? でも……だって、唯は……」 「もう終わってるって何度も言ってる。それでも分からないって言うなら、いい加減……怒るよ」  言葉の意味とはほど遠い甘い声音でそっと告げながら、腰を掴んで華奢な体を少しずつ持ち上げていく。 「あ、あ……や、やだっ」  ペニスが抜けそうになったところで、体を捩って抵抗するが、それを無視して最後まで抜くと、「なんで?」と喘ぐ暁の唇をペロリと舐めてからキスをした。 「欲しいなら、自分で挿れてごらん」  我ながら意地の悪い行為をしている自覚はあるけれど、それでも止められないのだから、(たち)は悪いが仕方ない。 「できないなら、終わりにするけど」 「やっ……あ、くぅっ」  根本を戒められた上、勃ち上がり、先端からは蜜を垂らしている暁のペニスを指先で弾き、それを緩く扱いてやれば腰がカクカクと前後に揺れた。 「やる、やるから……」 「いい子だ」 「んっ……くぅっ」  耳朶を噛んでから甘く告げると、悦ぶように体が跳ねる。  首から離れた暁の両手が、探るように唯人のペニスへと辿り着き、それをおずおずと掴むまで、じれったさを感じながらも何もせずに見守った。  確かめるように触れる掌がくすぐったくてたまらないが、暁のすること全てが可愛いく思えるのだから既に末期だ。 「うっ……ん」  ようやく照準を合わせた暁が、腰を少しずつ落とはじめる。

ともだちにシェアしよう!