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何もいらない
「ようは? わかってたら解説してや」
今度は唸りながら後ろ髪を掻いているようちゃんに問いかける。
「全然わかんない」
「お前がわからんなら、アカンやん」
真昼はハハハと棒読みで笑った。
「なんか血って言っておりましたので、ようちゃんが吸ってみたらいかがでございましょう。頭が冴えてわかるのではございませんか?」
「あっ、そうしてみようか?」
彼らの言動の意味がわからない僕が避けられるはずもなく、ようちゃんに左の鎖骨から吸血をされる。
チュプ、チュプ
何時間ぶりかわからないけど、待っていたかのように受け入れてしまう僕。
気持ちよくて
温かくて
優しいんだ。
チュプンと唇が離れても、身体は毛布にくるまれているかのように温かかった。
「で、わかった?」
「めっちゃ美味い」
満足そうに言うようちゃんに明るく笑い出す真昼と夜彦。
この人たちは何も望んでいないのかもしれない。
僕は今のやり取りからそう思うしかなかったんだ。
「忘れてたけど、自己紹介。朝日陽太 18歳、ゆーたんのにぃにぃでしゅよ~」
ようちゃんは左手を振り、右手でカメラを持ってパシャリと撮った。
それでここがようちゃんの部屋だってわかった。
また部屋を見回したらほんのりピンク色に色づいていたので確信したんだ。
真昼が19歳、夜彦が20歳と聞かされながら、黄緑のズボンと灰色の半袖シャツ、黒地に赤いイチゴのイラストが散らばったパーカーを3人に着せられた僕。
「サイズはぼくぅに近かったからぼくぅの服やから。アレンジしたいなら遠慮なく頼んでなぁ」
後ろは違う果物にしたいし、ズボンはダメージ入れたいしとぶつぶつ言い出した真昼は服を作り直すのが好きなんだとなんとなく理解した。
「呉服屋に勤めたらいいのに」
「ぼくぅ犬派やもん」
会話の意味がいまいちわからなかったけど、ここにもお店があるんだと思ったら、なぜか大きくお腹がなった。
「まずはご飯にいたしましょう……腹が減っては戦は出来ぬ、でございます」
おほほと笑う夜彦は僕に手を差し出す。
僕はその手を取り、立ち上がった。
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