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ヤキモチ

 「真昼は?」 「βでございますし、外では優しいと聞きますからそれなりにモテるかと存じます」 ある意味自分を持っているから、人を惹き付けるのかもしれない。 「じゃあ、ようちゃんはもっとモテるよね」 だんだん声は小さくなるし、顔は下に向いていく僕。  でも、夜彦はふふふと嬉しそうに笑っていた。 「それが一番聞きたかったのでございますね……そして一番聞きたくないと」 まだあんまり知らないから、もっと知りたいんだけど、知りたくないような気もする。 夜、ようちゃんと一緒に寝るんだけど、その時のアレのクセが気になるんだ。 気持ちいいか確認するとか いやらしく撫でる手つきとか 最後の決め台詞とか どこで誰としておぼえたのか、ちょっと気になるだけなんだ。    「わたくしの部屋でわたくしのヒートを抑えるためにしたのが初めてでございます」 僕の頭の中を読んだかのようにするすると夜彦が話すから、僕は勢いよく顔を上げた。 「すべて声に出ておりましたので、正直に答えさせていただきました」 僕は慌てて口を押さえたけど、だだ漏れでございましたと穏やかに笑われる。 「性交為を定期的にいたしますと、ヒートが軽くなると聞きまして最初は真昼にやっていただいていたのですが……αの方が効果があるそうで、試行錯誤の末に何回かされたのでございます」 ポツリポツリと言いづらそうにいうのを聞いて、僕は仕方がないと思った。 でも、胸のモヤモヤは晴れないんだ。 「ヤキモチでございますね……かわいいですよ」 おほほと笑う夜彦は僕の髪を優しく撫でる。 気持ちいい……でも、欲しいのはこの手じゃないんだ。  「僕がヒート来たら、ようちゃんがしてくれるの?」 抵抗するように言うと、困った表情をする夜彦。 「夕馬は人間なので、仕様が違うのでございます」 僕はガッカリしてため息を吐いた。 「でも、もっとすごい抑え方をいたしますよ」 いきなり耳元でゆっくりと囁かれたから、僕はゾクゾクが止まらなかったんだ。

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