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望み通り

 「単純に言うとそうだけど、こう考えれば君の望んでいた通りになるよ」 僕の望み通り……? 「カカと君は血が繋がっている。だから、君の3人の兄たちとも血が繋がっている証拠になるんだよ」 僕はそれを聞いて、ハッとしたんだ。  「そして君は朝日家の一員だから、そのうちにこの街の重要な役目を務めることになるだろうね」 僕は思わぬ予言に動揺する。 「そんな、僕……Ωだし、まだまだダメダメだよ」 自信がなくて俯く癖は相変わらず直らない。  「この街には障壁なんて存在しないって教えたでしょ?」 トントンと肩を叩かれたから、思わず顔を上げる。 細い眉、一重の瞳、筋が綺麗な鼻、適度なバランスの唇を持つ万生くんの顔がとてもカッコよくて目を奪われそうになる。 「万生くんの方がカッコいいし、頭も良いから、きっと良い役職に就けると思うよ」 お世辞じゃなく、本当に思って言ったのに、鼻で笑う万生くん。 「そしてボクはβだけど、そういう問題じゃないんだ」 万生くんは僕を抱きしめて、耳元でこう囁いた。 「暴れん坊のα……朝日陽太を嗜めるのは君しかいないんだよ」 僕は大きく身体を震わせた。  万生くんが右手を伸ばすと、1冊の本が本棚から自ら飛んできた。 「αの対処法の書籍を貸すよ……これはたぶん1日では読み切れないだろうけど」 ほどほどにしてくれよとため息を吐く万生くんにまた首を傾げた。 「首の痕、丸見えだから」 笑いながら首元を指差すからそこを押してみると、身体がズクンと疼いたんだ。    「午後は絵本を作っているんだってね」 コーヒーとフルーツサンドを食べながら、雑談をする万生くんと僕。 「僕を主人公にしていて、3人の得意分野を活かした作品なんだ」 日本みたいに卒業作品というわけではないんだけど、作って発表するのが今の僕らの夢なんだ。 「文潟の明日を担う四兄弟のものだからね……楽しみにしてるから」 「もちろん、最初に披露するのは万生くんと志朗さんだよ! それは絶対だと夜彦と言ってるから」 ありがとうと微笑む万生くんを見て、僕は恵まれているなと改めて思ったんだ。

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