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 次第にはっきりし始めた視界に、侑紀は辺りを見回してぽかんと口を開けた。  鳳凰  色彩の洪水と思われたそれに形があるのだと知る。  天井に向けた視線をずらすと、極彩色の龍が何頭も絡み合う姿が見えた。  梅  蛸  蝶  モチーフはそれぞれだが、壁一面に仏閣に描かれるような彩りでそれらが華やかに描かれている。  そして、自身と壁を隔てる赤い格子に気が付いた。  時代劇の牢屋のようなその格子。 「なんだ…?」  ただただ、その言葉しか出ない。  壁画には絵を邪魔するような窓が無かったため、この部屋が何処に在るのかも分からず、侑紀は情報収集を諦めてふらつく頭を休める事にした。 「…ったく。マジわかんねぇ」  しがないサラリーマンの侑紀を拐った所でメリットなどが無いのは、本人が一番分かっている。  高校卒業と共に家を飛び出してからは実家とも連絡を取っておらず、周りも天涯孤独だと思っている筈だった。  旨い食事をして、その後はホテルにしけこむ予定にしていたのに…とぼやく。  何故全裸で、仏閣も真っ青な壁画のある部屋で転がって居なければいけないのか…?  考えても仕方の無いことを思いながら、時が動くのを待つ。

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