10 / 62
9
胃が縮まり、口に酸っぱい物が上がってくる。
自分の精液を舐めている事実に、侑紀は叫び出しそうだった。
「うっ…止め、ろ…っ」
「ダメ、綺麗にして」
振り払いたかったが、時折汰紀がレナの名前を口に出しては脅し、侑紀は目尻に涙が溜まるのを感じながら舌を動かした。
「っ…う…、これ、で…いいか?」
口一杯に広がる不味さに、涙どころか鼻水まで垂れ始め、情けなさに俯いて問い掛ける。
「……まぁ、いいや。顔上げてくれる?」
は?と返しながらも、立ち上がった汰紀を追うように顔を上げてしまう。
「俺のも出すから、受け止めてくれる?」
小さな子供のようにズルズルと鼻を啜りながら、理解しきれずに首を傾げる侑紀の顔の前で、汰紀は完勃ちしたモノをスラックスの中から引きずり出す。
「おま、え…何?言って……」
すぐ目の前で、弟とは言え他人のモノを突き付けられて、逃げることも出来ずに驚きのままにソレを見た。
ぐずりと鼻を啜る。
「は…、兄貴の…泣き顔って そそるね?」
もう一度、侑紀の喉からは?と問い掛ける音が漏れる。
「良いね その顔」
ぽとりと、先走りが頬に落ちて我に返る。
「ちょ…止め……っ」
何度目かになるか分からない制止も、冷たく見下ろす弟の視線に遮られてしまう。
ぐちり
自身をしごく手から水音を出す弟を見上げた。
「…下、向かない」
上がる息を押さえて言い、汰紀の手が髪を鷲掴む。
「ぃ…っ!!」
目前で動く手は勢いを増していき、見える亀頭の割れ目がくぱくぱと動いた瞬間、
ぴしゃり
そう音が聞こえた。
異様に熱く思える粘液が、額から顎に掛けて飛び散る。
「ぅう…」
髪を掴む手に力を込められたのも、汰紀の小さな呻き声も、放心する侑紀には届かなかった。
ともだちにシェアしよう!