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「縄を変えるだけだよ?」
くすりと笑われ、一人早合点した羞恥にむっと唇を歪めた。
「それとも、…殺していい?」
「っ!?」
「冗談だよ、兄貴の百面相って面白いね」
汰紀の浮かべる表情に欠片も冗談を見付けられず、侑紀は念の為に身を引く。
緊張に渇いた喉へ無理矢理唾液を飲み込むと、こちらに来る様子の無い侑紀に焦れたのか、刃物を置いて代わりにロープを取り出した。
扉を操作して牢の中へと入ってくる。
「な、何す……」
無表情に此方に来る汰紀を避けるように、一歩後ろへと下がる。
「あっ」
どっと背中が格子に当たった。
「あの女、どうなっても良いなら抵抗しなよ?」
「ふ、ざけん…な……いつまでも、そんな…脅し…」
「でも声は震えてるし、抵抗もしないよね?」
嘲るように笑われながら、ロープが首に掛かるのを震えながら受け入れる。
その紐が格子に掛けられるのを見ている侑紀の歯ががちりと鳴った。
「…なぁ、何を…」
首を吊られる自分を想像して青くなっている侑紀を他所に、ロープは座り込んでも幾分余裕がある程度で固定された。
「あ、…ぁ?」
「何?吊るされたかった?」
「ちが…」
「異様に伸びた首に、飛び出した眼球と舌、痙攣する体に失禁…」
夕食のメニューのような口振りで言われ、侑紀はは?と返した。
「それも魅力的だけど、お楽しみにとっておこうよ?」
「た、たのし…?」
弟の行動が分からず、だからと言って逃げ出すことも出来ないままに見上げる。
見上げた侑紀に、汰紀の手が延びた。
肩を突かれ、腕を縛られたままの侑紀は無様に畳の上へと転がる。
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