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ふぃ と何かが目の前を通り、思わず視線が動いた。
「…………蝶?」
背後から、ふわふわと何匹ものソレが飛び立つ。
黄の鮮やかなギフチョウ
蒼の映えるアオスジアゲハ
色彩の豊かなアゲハにオオムラサキ
脇を、頬をくすぐりながらうねりを作る。
そのうねりが微かな梅の匂いを運び、
恐る恐る見た先の壁の鳳凰が、ズルリと顔をもたげた。
「ぅ ……っああぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」
暗転した中に、ぽつりと明かりが点る。
また何かの目かとぼんやりと思い、侑紀は飛び起きようとした。
けれど体は思うようには動かず、口からは息苦しさに呻きが漏れただけだった。
「っ……ぅ 、っ」
暗闇に恐怖を感じて手を伸ばす。
空を掻き、虚を掴もうとする指先に何かが触れた。
「ひっ…、 ひ っく… ぅ、ひ……」
そこで初めて、息苦しさが泣いていたせいだと言う事に気付き、侑紀はしがみつく手に力を込めた。
「 あの絵の使い方、分かった?」
その声に、嫌悪を抱かなくてはならなかった筈なのに、侑紀は安堵に息を吐く。
「悪趣味だろう?」
ふふ と笑い、汰紀はしがみつく兄の肩を抱いた。
「ひーじぃさんの遺品だよ。昔はここに村の娘を閉じ込めたんだってさ」
「…ひっ… ぅく…、ぅ…う……」
「入れられた約半数がイッちゃうんだって 」
侑紀が聞いていようと聞いてなかろうと、汰紀は続ける。
「残りは… 」
泣きながら震える侑紀のつむじに口づけた。
「 従順になるんだってさ」
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