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第8話
翌朝、目を開けるとオレを抱き締めながら眠っていたサフランは居なかった。
急いで起きてベッドの上を見渡せば、端の方で小さな白い塊が微かに寝息を立てていた。
一昨日までのチビのサフランだ。
けれども、ひと回り背が高くなっていて髪は白い。一房の前髪と眉毛は赤くなっている。
それ以外はオレの知っているサフランで、まるで昨日起きたことが夢みたいだ。
白い睫毛が動いて、丸みを帯びた金の目がオレを見る。
「おはよう、バジル」
少しだけ大人びた声と言葉が、夢じゃなかったんだと告げていた。
マオリ爺さんはまたまたイグアナ頭の目をまん丸くして、カモミール姐さんはこちらが本来の発達の仕方だと安心していた。
昼前に起きてきたヴィーノとアルゴは驚きを通り越して、獣人は本当に出鱈目なヤツばかりだと呆れていた。
「ねえ、僕でもヴィーノとアルゴみたいな冒険者になれるかな」
彼らを宿から見送る時、サフランはそう聞いていた。すぐ街を発つらしい。ランクを上げる為の準備を始めるそうだ。
「まあ、なるのはそう難しくねえな」
ヴィーノはアルゴを見る。アルゴは頷いて、それからサフランに言う。
「ああ、問題は続けられるかどうかだ」
「そうなんだ・・・」
サフランは俯く。アルゴの筋肉質な腕が伸びて、白と赤の頭をポンポンと叩いた。
「なれないとは言っていない」
サフランはお日様みたいに金の目を輝かせる。
「僕、がんばるよ。
怖がりも治す。何が怖いか見極めて、どうすればいいのか考える。そうすれば怖いものなんて何も無い。
そうでしょ?」
「上出来だ。正しく恐れるんだ。冒険者でなくとも、それはきっと役に立つ」
アルゴは拳を差し出す。サフランは目をパチクリさせて、それからすごく嬉しそうに小さな拳を作って突き合わせた。
あの2人が旅立ってからも、サフランとオレの日々は変わらない。マオリ爺さんと宿屋の仕事に駆けずり回る。ただ、暇を見つけてはジョギングしたり筋トレしたりする時間が加わった。
それから、頬にしていたおやすみのキスは口付けに変わった。日に日にサフランが妖艶になっていくのは気のせいだろうか。
やがてサフランと恋人として結ばれてたのも、メルクマールを出て本当にサフランと冒険に出るようになる事も、まだもう少し先の話だ。
『サフランとバジルの冒険』 完
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