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 ――その後ろ姿を見た時、心臓が止まるかと思った。  シャルル・ド・ゴール空港は天候事由の航空機遅延のため、フランス語と英語のアナウンスをひっきりなしに流していた。  嵌め殺しの彩光ガラスの向こうは無残に吹雪いている。その様子をオレンジ色のライトが照らし出していた。大雪と滑走路の凍結で、各航空会社のフライトスケジュールは全て遅延になり、半数以上の便がキャンセルになった。薄暗いロビーの中にいる人々の表情はどれも暗く、重い。自分が搭乗予定だったエールフランスの最終便も欠航になり、その運の悪さに、俺は深い溜息をついた。  クリスマスのパリに突然襲い掛かった大寒波のおかげで、周辺のホテルは早くも満室になり、ロビーで一夜を明かす事になりそうな乗客たちがパニックを起こし始めている。空港内は苛立ちと諦めが入り交じったようにざわめき、人の体温で蒸し暑いほどになっていた。  メインロビーにある電光掲示板は、パリを含む北フランス二十七県に大雪が降り、午後からパリ市内や郊外、北フランスの交通が麻痺していると伝えている。観光地のベルサイユ宮殿やエッフェル塔も閉鎖され、1946年以来の記録的な降雪と文字が流れた。市内は十センチ以上の積雪らしい。これでは市内に戻る事もできない。  どこまでもついていないなと苦笑しつつ、俺はロビーから航空会社のラウンジへ向かった。

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