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俺と藍沢友章 は生まれた頃からの幼馴染だった。新興住宅地に小さな戸建を建てた両親は、そのコミュニティの中で藍沢の両親と仲良くなった。
家族ぐるみの付き合いとはこういうのを言うのだろう。藍沢の両親や妹がどんな人間なのかを、何が好きで何が嫌いなのかを、藍沢を通してではなく実際の家族同士の付き合いの中で知った。
初めて海へ行った時も、初めてキャンプをした時も、藍沢の家族が一緒だった。
たくさんの眩しい記憶――重箱に伸ばした小さな手の上に舞う桜の花びら、藍沢と妹の目に映る艶めいた夏の花火、並んでスイカを食べたウッドデッキの匂いと太陽が肩を焼く痛み、橇で滑り降りた硬い雪の斜面、おみくじの列に並んで耳朶まで冷えた冬の朝――その全ての景色に藍沢の両親や妹がいた。そして自分の隣にはいつも藍沢がいた。
母親は、産婦人科の母親学級で知り合ったから、あなたたちは胎児の頃から知り合いだったのよと、事あるごとに繰り返した。実際、藍沢の自宅は目の前にあった。
そこから地元の幼稚園と小学校へ通い、お互い中学受験をして少し離れた中高一貫教育の私立へ進学した。自分の苗字は秋葉で、進学した中学でも二人の名簿はくっついたままだった。初めてそれを見た時、恥ずかしくなってお互い目だけを合わせて笑った。
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