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「最初は嫉妬してると思ったんだ。俺と光太郎はずっと一緒にいたから、急にその間に深美が入ってきて、おまえも戸惑ったんだろうって。でも、段々違うと感じ始めた。おまえは深美の事が好きだったんだよな?」  そう言われて小さく微笑んだ。この男はどこまでも変わっていない。安堵するような気持ちの中で、軽く突き放されたような気持ちにもなった。分かり合えない何かが心の一部をすっと冷やした。 「どうだろう。もう十年も前の事だからな。上手く思い出せない。子どもだった自分が何を考えていたかなんて、もう憶えてない。多分、くだらない事だ。今思えば、本当に取るに足らないような……くだらない事なんだ」 「そうかな」  藍沢は視線を窓の外へ移動させた。外はまだ吹雪いている。さっきよりも酷くなったような気がした。 「正直に言うとさ、深美はおまえの事が嫌いだった。あのおとなしい深美が、おまえの話をする時だけは攻撃的になった。光太郎くんの話はしないでって、ぐっと睨むような仕草をするんだ。俺はそれが意外だった。おまえは誰かから嫌われるようなタイプの人間じゃないからな。俺たちが疎遠になったのは、あいつにも原因があったんだ」  元橋は本当に頭のいい女の子だった。自分が藍沢を好きでいなかったら、確かに彼女に惹かれていたかもしれない。けれど、元橋は藍沢の彼女だった。必然的に憎む存在になってしまった。  高二の冬に彼女から呼び出された時、何を言われるのか直感的に理解した。そして嫌な予感は当たった。

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