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第9話 【稲川圭太くん(大学生)】 - 1
「今日のクライアントは、こないだ話した、友人の稲川 圭太(いながわ けいた)くんです。同級生だから今大学2年です。もうすぐ来ると思います」
カラン カラン……
間もなくドアが開き、圭太くんが入ってきた。高校からのボクの同級生だ。といっても、高校の時に編入してきた帰国子女で年齢はボクの1つ上。
ニコニコ人懐っこい笑顔が印象的で、みんなをまとめるのが上手くて、自然と周りに人が集まるリーダータイプ。
日焼けした肌と引き締まった身体は、趣味のサーフィンによるものだ。編入してきた時も、すぐにみんなに溶け込んで、クラスの人気者になっていた。
「圭太くん! 場所すぐ分かった?」
「うん大丈夫、すぐ分かったよ。
今日は色々手配してくれて、ありがとな! よろしくお願いします」
「ようこそ、セラピーへ。
圭太くん、奥の席へどうぞ。すぐ蘆屋先生が来るから座ってて」
ボクはいつもの説明を一通りして、飲み物を用意する。
「圭太くんは甘いの好きだよね。ミルクティー用意した! 冷たい方がいいよね」
「ん、ありがとルイ」
ほどなくして蘆屋先生がテーブルに着き、一通り挨拶を交わすと圭太くんの話が始まった;
今日相談したいのは、いわゆる三角関係っていうんでしょうか。
大学の友人の浜田 海斗(はまだ かいと)くんと、横屋 朋美(よこや ともみ)さんとのことです。
海斗(かいと)くんと初めて会ったのは大学の入学式でした。
たまたま隣の席に座っていたので、声をかけたのがきっかけです。
ピアスして、ジャラジャラメタル系のアクセサリー着けて、他の学生と違う雰囲気だったのが面白そうだったんで。
僕はルイ君と同じで、高校から上がって進学したんですが、僕らの学校って割と真面目なタイプが多いんです。そんな中、こんなヤツもいるのかと。
「僕、稲川 圭太っていうんだ。ケイって呼んでよ」
話しかけると、恐ろしくそっけなくて、
「ウっす」
と、前向いたまま返事はそれだけ!
目も合わせてくれないし。
僕のテンションと違いすぎて「なんだよ~」って、肩透かしを食らったみたいでした。
その後、教室に入ると、同じクラスにいました。相変わらず仏頂面で。
クラスには、高校からの友人たちも何人かいて、女子の何人かが
「あっケイも同じクラスなんだ~!」
って机に寄って来ました。
すると、さっきまで知らん顔していた海斗くんが突然、自分から寄って来たんです。
なんだ、こいつ!? 女狙いか~!
って呆れつつも、しゃべってみると結構いい奴でしたね。
僕は親の都合で高校から日本で、同級生よりも1つ年上なんです。
聞くと、海斗くんも1浪で同い年と分かりました。
その辺から意気投合して、よくつるむようになりました。
一緒に飯を食いに行ったり、映画を見たりライブに行ったり、夜中は2人でドライブしたり。夏は2人で北海道に2週間ほど旅行に行きました。楽しかったナ……
カイとはすごく気が合うんです。
6月ごろ、カイ…… 海斗くんのことですが、カイと学園祭実行委員会に入ることにしたんです。せっかくの大学生活だからやってみよう、と。
その実行委員会に、すごい美人がいたんです。
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