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第8話 - 4

翌週、鈴木さんがバーに来た時に 「先日相談させていただいた件、おかげさまで解決しました。ありがとうございました」 と、簡単に報告してくれた。 いつも通りの優しい笑顔の鈴木さんに戻っていた。 詳しくは分からないけど、うまくいったんだね。よかった。 石井さんからも、 「おかげさまで落ち着きました。色々ありがとうございました」 と、簡単な報告メールがあった。 あんなにいっぱいしゃべる人だったけど、解決した後の報告はすごくシンプルだ。 なんだか分からないけれど、とにかく解決したようだ。よかった。 報告があった翌週の金曜夜、鈴木さんと石井さんが一緒にバーにやって来た。 「こんばんは~」 「いらっしゃいませ。今日はご一緒なんですね。仲、良いですね」 ボクが迎えると、2人は顔を見合わせて、なぜか照れ臭そうに笑いながら、カウンターの端の席に座った。 「蘆屋先生、その節はどうもありがとうございました。 実は近々、一緒に住もうかという話も出てまして。おかげさまで」 と、鈴木さんが言って、また2人顔を見合わせてから一緒に軽く頭を下げた。 「よかったですね」 蘆屋先生が嬉しそうにほほ笑んだ。   え?? どういうこと?? 「一緒に住むって? え、鈴木さんと石井さんが、ですか?!」 鈴木さんがボクを振り返った。 「そうだよ」 「え? どうして……」 驚くボクに、石井さんが言った。 「ルイ君、こないだ先輩と店で一緒になった時、気づいてたんじゃ、なかったの?!」 「え? え? そ、そうなんですか? あれ? 蘆屋先生は気づいてました?」 「ふふふ、ルイ君は可愛いですねぇ」 蘆屋先生と鈴木さんが目を見合わせて、愉快そうに笑い出す。 「なぁんだ~、ルイ君って天然?」 石井さんも笑い出す。 「いや、ボク…… ハイ、全然ボク気づいてませんでした!」 え、なに? 鈴木先生の相手って、男だったの? 女の人だとばかり思ってた! ええーーーっ!? しかも石井さん? あっ、そういえば、石井さんの“先輩”、ヅラだって言ってたな! なんで全然気づかなかったんだろう、ボク。なんだか情けなくなってくる。 その日は、2人の事よりもボクの大ボケぶりが話題で、結局閉店まで大盛り上がりだった。 なんだか色々、腑に落ちない。 だいたいさぁ、明るいけれどもペラペラ騒がしいあの石井さんが鈴木先生の恋人って、何! 別にいいけど、なんとなく納得できない! 鈴木先生は、あんな人が好きなの? なんかちょっと、イメージ違うし!  ……けどまあ、幸せそうだから、いっか。え、いいのか?  うーん。 それにしても、だよ。ボクって、そんなに鈍いのかなあ? いや鈍いよな。鈍い、鈍すぎるだろ! なんで全然気づかなかったんだろう。 ……ううっ、情けない。 モヤモヤしながら店を片付け終わって帰ろうとすると、蘆屋先生に呼び止められた。 「ルイ君のそういうところ、私は好きですよ」 先生がボクの頭をなでて、額にチュッと軽いキスをした。 ドキッとした…… けど、なんだか嬉しくなっちゃった! 石井さんの嘘つき。 頭ポンポンされて喜ぶ人なんて今時いないって言ってたけど、結構、いや、メチャ嬉しいじゃないか。ふん! さぁてと。明日のセラピーはどんな人が来るのかな? 楽しみだな! (第8話 END)

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