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第12話【岡山 英二さん(若手エリート)】 - 1

「先生、何かいい事ありました? なんだか嬉しそう」 いつになくウキウキした様子で鼻歌を歌ったりしている蘆屋先生にボクは声をかけた。 「あは、そう?   兄から連絡があってね。上の兄なんだけど。 久しぶりに帰国するんだって。何年振りかな、本当に久しぶりでね」 「先生お兄さんいるんですね、知らなかった」 「話したことなかったものね。 兄が2人いてね、上の兄は14離れているんです。バリ島に住んでいて、滅多に帰って来ないんですけれどね。何か用事があるらしくて。本当に久しぶりだ」 いつになくスラスラ話してくれる。 「2番目の兄は7つ上でね、ウチの家業を継いでいるんだけど、まだルイ君は会った事なかったっけ? あまりこちらには来ないからね」 「ええ、まだ会った事ないです。先生にお兄さんがいるのも、はじめて知りました」 先生はグラスを磨きながら笑顔を見せた。 「まあ、ここに居ればそのうち会うことになるでしょうね、フフフ」 お兄さんに会えるのれが、そんなに嬉しいんだな。どんな人なんだろう。 そんな話をしているうちに、今日の恋愛セラピーの時間になった。 今日のクライアントは、岡山英二さん。大手商社勤務の若手エリート、都内在住の25歳。 パリっといかにも仕立ての良さそうな濃いグレーのスーツに、洒落た濃いブルーのネクタイ。襟の形がなんともきれいな白いシャツも上質そう。長めの前髪を後ろに流し、いかにもエリートらしい雰囲気だ。 「こんにちは。予約しておりました岡山と申します」 よく通る声も爽やかで感じがいい。こういう人ってモテるんだろうなぁ 「ようこそセラピーへ。奥のテーブルへどうぞ」 ボクはいつものようにご案内してお茶の用意。 先生が白衣を着て出てくると、早速岡山さんの話が始まった。

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