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第13話 - 2

六本木駅で待ち合わせました。昼頃です。 ミッドタウンで洒落た惣菜やワインを買って、裏の芝生で食いました。六本木の真ん中にそんな所があるなんて知らなかったんですけど、あそこはいいですね。普段、雑多な町で暮らしているんでね。東京にいる気がしませんでしたよ。店は任せろって言われてたんで高級レストランにでも行くのかなと思ってたんですけど、ショウがそんな風なチョイスだったのが驚きでした。 よく晴れて気持ち良い日で、芝生のあちこちにハンモックなんかも置いてありましてね。寝そべって色んな話をしました。 ショウは海外旅行が好きらしくて、年に数回あちこち行くらしいんです。 その時は上海に行った時の事を話してくれました。 いや、1人旅ではないようです。なんでも、ワーホリでカナダに行っていたらしくて、バンクーバーだったかな、その時の友人と旅行するらしいですよ。ええ、男です。現地の人で、ウィルっていう、ベトナム系カナダ人だそうです。その友人の事もよく話していました。 上海もウィルと2人旅だったそうです。 スタバに行った話をしてくれて。上海ではスターバックスに行くのが結構なステイタスらしいですね。外のテーブルでコーヒー飲んでたら、現地のファッション雑誌の人にモデルになってくれないかと声をかけられたんだって笑ってました。 えー、顔はどうですかね、まあそんな美形ってわけではないけれど、俳優なんかで言ったら個性派って言われるタイプじゃないですかね。 でも、体はできてますね。筋肉の付き方がすごくきれいなんですよね。時計の特集ページだとか言っていたから、何かそういうタフな男のイメージが欲しかったのかもしれません。 現地の女の子にもモテたらしいですよ。2人組に声をかけられて、ショウとウィルとその子たちで観光して歩いたそうです。 まあ僕と出会う前の旅先の話なんで、どうってことないんですがね。上海ではこういう顔がモデルにスカウトされるんだーなんてちょっと感心したっていうんですかね。ああ、あとショウは女もイケるタイプなのかなとは思いました。 あと、ウィルのお爺さんたちがいるベトナムにも行ったって話してましたね、大家族らしいです。それに、ベトナムは料理が美味しいんだって。 あと、オーストラリアの話もしてたなあ。ゴールドコーストでカジノに行ったんだって楽しそうに話していました。 僕は卒業旅行で一度ハワイに行ったくらいで、海外は行ったことないんです。一人暮らしの会社員には、なかなか海外旅行なんて難しいですよね。 憧れてはいるんですけどね。そう言ったらショウが、そんなことないって言うんです。 「本気で行きたいって思っていないから行っていないだけで、本当に行きたいと思えばいつだって行けるよ。リョウはそこまで行きたいって思ってないだけじゃない?」って。 ハッとしました。 「じゃあ、本当に行きたいって思ったら僕もイケるかな?」 って僕が笑うと、あいつ力強く頷くんですよ。 30歳過ぎて、この先もなんとなく過ぎて行くのかなあなんて思ってたのに、ショウの言葉を聞いて、パッと世界が明るく広がって来るような気持ちになったんですよね。 「それじゃあさ、僕、小さいころ世界一周旅行に行きたいって思ってたんだけど、ショウ、いつか、一緒に行かないか」 って言ったんです。ショウは一瞬(おどろ)いた顔をしてましたが、すごく嬉しそうに笑って 「オレと? 本気で? いいね、行こうぜ。いつか絶対!」 って。その後、何度も「世界一周旅行かあ~」って上機嫌でつぶやいてました。

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