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第13話 - 5
次に松岡さんがカウンセリングに訪れたのは、それから3カ月ほど経った夜だった。
「ショウとフランスに旅行に行っていたんです」
え? フランス?
うまくいってる…… のかな? いやまたカウンセリングに来たという事は……
先生はおだやかな表情で返事する。
「フランスですか、いいですね。いかがでした?」
「いやぁ、思った以上に素晴らしくて感動しました。
この時期のパリって本当に美しいんですね。気候もいいし。吹く風までキラキラしているようで。これが花の都かと思いました。この時期行くのは初めてだったのでね。
通りを歩いているだけでウキウキして、思わず『お~シャンゼリゼ~』なんて歌っちゃいましたよ」
「それはよかった。春から夏前のパリは最高ですね」
松岡さんはテーブルの紅茶に口をつけてひと息つき、本題のショウさんとの話に入った。
今回の話はこうだった:
前回カウンセリングに訪れた後に、ショウの妹に会ったんです。
出かける時に忘れ物を取りにショウの自宅に寄った時に。その時、初めてショウの自宅を知りました。多摩川を渡って少し行ったところにある普通のマンションでした。
父親の会社の社宅に家族で住んでいたらしいのですが、古くなって取り壊され、そこに新しくできたマンションを父親が優遇価格で買ったのだと言っていました。
妹さんは、ショウの2歳下だそうです。気さくでいい子でしたよ。その日は少し挨拶しただけでしたけど。犬と猫を一匹ずつ飼っていてね。普通の平和な家族という感じでした。少しして母親も帰ってきたんですけど、僕の事を話しているらしくて、まあ友人としてですけどね。「いつもショウがお世話になっています」と言ってくれて。
ちゃんとした家族で、紹介もしてくれて、僕はホッとしたんです。
後で聞くと、妹さんは妊娠しているそうで、相手の男性が既婚者なのを隠していて揉めているんだとか。まあどこの家庭にもいろんな問題はあるんでしょうけど。でも気の良さそうな子なのに、解決するといいですよね……
まあそんな事があって、一緒にフランス旅行しようって話になって、行ってきたんです。
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