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第15話 - 9
こんにちは、ルイです。
海斗くんがセラピーに来て2か月ほど経ちました。
先生が処方した薬のおかげでしょうか、最近とても機嫌良さそうです。
学食でひとり定食を食べていると、海斗くんと圭太くんがやってきた。
海斗くん、例の相談事はもう解決したのかな。
「よぅ、ルイ君。元気? ひとり? 一緒に食おうぜ。この席、空いてる?
近々さ、先生ンとこ飲みに行くわ。ケイと一緒にさ。今度バイト、いつ入ってンの?」
その週のうちに、ふたりして店にやって来た。
ボクは先生とふたり、カウンターに入っていた。
セラピーの時間以外は、こちらからクライアントに相談事について話題をふることはない。クライアントが言い出せば、話は聞くけどね。
海斗くんは終始ご機嫌で、サーフィンの上達具合など話している。圭太くんもニコニコで海斗くんの奮闘ぶりを褒める。褒められるたび、海斗くんはさらに饒舌になる。
「ルイ君、もう一杯ちょうだい」
3杯目のビールに差し掛かった頃。海斗くんが座りなおして姿勢を正すと、こう言った。
「先生。こないだはどうもありがとうございました。アレ、すごかったっス!」
キター! やっとこの話題! どうなったんだろ。すごく気になってたんだ~!
「そうですか。良かったです」
先生はニッコリ。
海斗くん、少し照れたように鼻のアタマを左手でこする。
「やっぱ先生ってスゴイんスね! 俺もう全然元気っスよ!……な、ケイ!」
「え? あ、あぁまあそーかな」
は? なんで圭太くんに話をふるんだ?
「っんだよぉ、元気だろ!?」
海斗くんが圭太くんの肩を小突く。
圭太くんは少し困った顔で、素早く先生と僕の顔をうかがった。
先生はおだやかな笑顔で返す。
「そうですか、良かったですねぇ」
圭太くんは咳払いして言った。
「カイ、よかったな!」
「海斗くん、もう1本アレ作りましょうか?」
「いや先生、今のところ大丈夫です。金もそんなにないっていうか…… あ、すんません! だって結構、高いんだぜ、アレ。
それにまぁ、あったらそりゃ良いけども、なくても大丈夫っていうか…… なあケイ!」
「ん? うん、まぁ、そうかな。大丈夫なんじゃない?」
ボクはふと気になった。
「ねえ海斗くん、なんで圭太くんに聞くの?」
「ぅええっ?? ああ、それな。ケイにもちょっと使わせてやったんだよ。な、ケイ」
「え!? ああ、そ、そうなんだよ」
「へええ、そうなんだ。圭太くんも使ったんだ。どうだった?」
「え? 何が? ああ、薬? そりゃもう! なあカイ」
へえ、圭太くんも使ったのか。そんなに良い薬なのか。先生の薬ってすごいんだな。
「そうですか。それじゃもう大丈夫そうですね。良かった。また何かありましたらいつでも言ってくださいね」
「ッス!」
海斗くんは、目を伏せながら少し照れくさそうにうなずいた。
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