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前編
ベランダに続く窓をスライドさせると、冷えた空気が顔に吹き付けた。
白み始めたばかりの空はまだ色濃く、やがて訪れる夜明けに抗うように星たちが瞬いている。
夜と朝が共存する暁の空。
言葉にできない色で塗られた景色の上を、白く小さな粒がふわりふわりと舞い降りていた。
リビングのエアコンをONにし、寝室へと足を進める。
ベッドの上の塊は俺が抜け出した時のまま、こんもりと膨らんでいた。
「理人 さん」
丸まった背中にそっと呼びかけても、ピクリとも動かない。
冷えた指先で首筋を辿ると、不快そうな呻き声が漏れた。
「理人さん、起きて」
「んっ……」
「積もりましたよ」
「ん、んぅ……なに、が?」
「雪」
寝ぼけ眼が重そうに瞼を押し上げたまま固まる。
すると、蕩けていたふたつの眼が形を変えた。
「うそ!降ったのか!?」
ベッドを飛び出した理人さんは、そのままの勢いでリビングを横切り窓に張り付く。
そして止めどなく降り注ぐ雪を見て、全身で喜んだ。
引き締まった尻がキュッと寄り、筋肉の凹凸が露わになる。
思わず手を伸ばしたけれど、届く前に理人さんの身体がこちらを向いた。
「佐藤くん、出かけよう!」
「えぇっ、今から?」
「うん!」
「真っ暗なのに?」
「うん!」
「朝ごはんも食べずに?」
「うん!」
「裸んぼのまま?」
「うんっ……あ!」
真っ赤になった理人さんが両手で股間を覆う――前に手首を掬い上げ、まだ温もりの残る身体を腕の中に閉じ込めた。
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