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雪解け
すぐ返信が来た。
『仕事片付ける。二十一時時計台前で』
昔デートの待ち合わせ場所でよく指定されていた場所だった。
はやる気持ちを抑え、着替えをしたが三十分前に着いてしまった。
街はうるさい。
スーツ姿の明るい髪の毛の男性が駆け寄ってくる。
「真白、さんですか?」
間違いなくあのインタビュー写真の啓慈だ。
本物の啓慈がここにいる。
彼の指が頬に触れる。雫をすくわれ、泣いていることに気付く。
「啓慈……」
そっと補聴器を外してみる。
「真白。好きだよ」
はっきりと彼の声が聞こえた。
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