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もう一度だけ、会いたい

 療養しても、体調は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、十二月を迎えた。  今年は暖冬らしいが、この地域は雪がちらついている。  啓慈の写真立てを胸に抱き、寝ているときだけが、しあわせだった。  あの後、耳のほうの治療に取り掛かったけれども、半分程度しか聴力が回復せず、補聴器をかけて生活している。 『真白、これ!』  母親がネットニュースの画面を見せてくる。 『見えないよ』  機械でゆがめられ変質した声、音を聞きたくなくて、筆談する。 「けいじ……?」  ライターが撮影したであろう啓慈の画像が数枚貼り付けられている、インタビュー記事だ。  記事を隅から隅まで熟読し、記事を書き終わっての欄に目が行った。  彼の父親が破天荒な経営者だったこと。不摂生がたたって、会社の跡を啓慈に任せて亡くなったこと。立て直すまで、朝も夜も関係なくがむしゃらに働いていたこと。  補足説明を入れながら、わかりやすく結論まで導く構成に、知らず涙がこぼれていた。  付き合っていた時に、何か一つでも聞いておけば変わったかもしれない。過ぎ去ったことなら、今から変えていけばいい。 『啓慈さんに何か伝えたいことがありますか? ときいたところ、お恥ずかしい話ですが、キチンと別れも言えずに別れた恋人にもう一度会いたいです。不誠実な恋人に会ってくれないと思いますが、と照れながら話してくれました。』  文末の彼の紹介文を読み、確信する。  SNSのリンクをタッチし、DMを送る。 『真白です。別れた理由が知りたいです。待ってます。今すぐにでも会いたい』と送り、真白を撮った画像を送信する。  めちゃくちゃな文だが、少しでも気持ちが伝わればいい、誰かわかってくれればいいと願い、返信を待った。  

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