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序章

天から今にもこぼれ落ちそうな銀の雫。 今宵の月はそんな印象を抱かせた。 深い森の奥。 月明かりの中の泉は青のインクを流し込んだようで、その中に佇む白い背中は眩しかった。私も彼同様に裸になって、泉の中で身体を抱き合わせる。 オパールのように虹色を帯びた白い髪を掻き分け、揚羽蝶の羽を思わせる尖った耳を指の腹で擦ると、彼はくすぐったそうに肩をすくめた。 そしてエメラルドの瞳で私の顔を映す。 私の顔は情けないことに、涙を流していた。

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