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1-01-2 憧れの人(2)
僕は、歩き出す高坂君に言った。
「待ってよ!」
高坂君はこちらを見る。
「何?」
「僕は本気で、高坂君のことが好きなんだ。それは信じてほしい。僕が気の迷いやその場の勢いだけで告白したんじゃないって事を。だから……」
恥ずかしい。
けど、言わなきゃ。神様、勇気を下さい。
ふぅ。
息を吐く。
「だから、フェラすれば、僕が本気だって信じてくれるんだよね?」
高坂君は、面食らったようだ。
「本気でフェラするのか? いや、できるのか?」
僕はこくりと頷く。
「青山、お前は男で、男のを口に咥えるんだぞ?」
「できるよ。好きだから」
高坂君は、しばらく僕を見つめている。
僕が本気で言っているのか、推し量っているようだ。
僕は目をそらさず、じっと高坂君の目を見つめ返す。
「まいったな……」
高坂君は、頭をかいた。
「冗談のつもりだったんだけど……」
「高坂君が自分で言ったんだからね!」
僕はむきになって言った。
「まぁ、そうなんだけど……」
高坂君は、そう言って困った顔をする。
「わかった。確かに俺が言ったことだ。いいだろう。でも、怖気づいたらやめてもいいからな」
「そうはならないから……絶対」
もう、後には引けない。
僕は唇を強く結んだ。
花壇の奥側は繁みになっている。
僕と高坂君は周りを気にしながら繁みの中に入った。
「ここなら大丈夫か……」
高坂君はそう言うと、制服のズボンのベルトは外す。
そして、ズボンとスッと下ろし、そのままパンツを下げた。
「ちゃんといかせてくれよな」
僕は頷くと、高坂君に近づく。
自分の体が震えているのが分かった。
フェラなんて当然の事ながらしたことはない。
本当に高坂君をいかせるのか?
自信なんかこれっぽっちもない。
そもそも、他人のペニスを口に含むなんて出来るのだろうか?
緊張する。
深呼吸をした。
僕は、高坂君の前に屈みこむ。
シャツをまくると、よく見える。
頭をもたげたペニス。
萎えてはいるけど、僕のに比べると遥かに大きい。
他人のペニスをこんなに間近に見るのは初めてだ。
高坂君のだと思うと、嫌な気はしない。
おそるおそる手を伸ばす。
そして指先が触る。
温かい。
僕が触れると高坂君はビクっと体を震わす。
そうか。
緊張しているのは、僕だけじゃない。高坂君もだ。
それはそうだろう。
よく知らない人の前で自分のペニスを出すのだから……。
なら、堂々としてやろう。
そう、自分がしてほしいことをすればいい。ただそれだけだ。
それでだめなら、その時はその時だ。
高坂君になんて言われたってかまわない。
僕は覚悟を決めた。
僕は、ペニスの先に軽くキスをした。
そして、舌をゆっくり伸ばし、ペニスの先をなめた。
スプーンの下をなめるように、舌の上で、ゆっくりと転がす。
僕の舌の動きに合わせて、高坂君のペニスはだんだんと大きくなる。
柔らかい部分を優しく揉みながら、根元から竿、竿から先へと舌を這わす。
下を向いていた高坂君のペニスはもう上を向いている。
大きい。そして固い。
先の方は赤く充血している。
頬を寄せる。熱い……。
僕は、唇を舌で舐めて湿らせた。
そして、両手でペニスを抑えると、ゆっくりと口にいれた。
唇がペニスに沿って形作られるのが分かる。
舌の上にペニスが乗っかる。
ああ、どうしたんだろう。
今になって、恥ずかしさが込み上げてくる。
僕は、高坂君のペニスを咥えているんだ。
そう思うと、体が熱くなってくる……。
あぁ。
僕も興奮しているんだ……。
きっと、頬は紅潮しているだろう。
目もうるんでいると思う。
僕は、頭を前後に動かす。
ぴちゃぴちゃ。
いやらしい音が漏れる。
咥えたペニスを口の中で舌全体をつかってれろれろと舐め回す。
れろれろ、ちゅぱ、ちゅぱ。
唇の端からは唾液がしたたり落ちる。
自分の口から出し入れされるペニスを眺める。
いやらしい……。
今は、悔しい気持ちはない。
ただ、高坂君が自分の大切なものを、僕に委ねている。
そんな高坂君をただ気持ちよくさせたい。
それだけ。
はぁ、はぁ、と高坂君の荒い息づかいが聞こえる。
僕は、ペニスをしゃぶったまま上目づかいに高坂君を見上げた。
はぁ、はぁ。
高坂君は、懸命に我慢している。
だけど、僕と目が合うと、「いく……」と短く叫び、僕の頭を押さえこんだ。
目をぎゅっとつぶっている。
高坂君のペニスが喉の奥までくる。
苦しい。
息ができない。
そして間もなく、ペニスが痙攣をしたのを感じると、ドロッとしたものが僕の口に溢れるのを感じた。
そして半開きになった僕の口からは、よだれと精液が混ざったものが垂れる。
しばらく、余韻に浸っていた。
なんとも言えない高揚感で体が熱くなっていた。
思い続けた高坂君が、僕の行為によって興奮し快感を感じてくれた。
嬉しい。
それに、思ったとおりだ。
僕は、高坂君のペニスを咥えてもまったく嫌な気持ちにはならなかった。
それどころか、もっと愛撫してあげたいとさえ思っていた。
高坂君は言った。
「青山が本当に俺を好きなのは分かった。ごめん。試すような事をして」
高坂君は、僕を見つめる。優しい目だ。
「で、告白の答えだけど。友達になる。でどうだろう?」
高坂君が言いたい事がよくわからない。
「友達?」
「そう。友達。俺とお前は男同士。付き合うとなると、周りから後ろ指をさされるようになる。俺だけじゃなく、お前もだよ」
高坂君は続ける。
「気持ち悪がれ、疎まれ、避けられ、そして、いじめられるかもしれない。最悪、学校にいられなくなる。だから、仲のいい友達。それならいいだろ?」
僕は、まだよくわからない。
「付き合えないって事?」
「まぁ、そういう事だな」
高坂君がそう言うと、僕は涙が溢れて頬を伝わった。
予想はしてたけど、やっぱり振られるってつらい。
僕の泣く姿をみて、高坂君はとっさに僕を抱きかかえた。
「泣く事ないだろ?」
「だって……」
「仲良くできればそれでいいじゃないか」
高坂君は優しい。
最初は、思いを伝えられればそれでいい、と思っていた。
でも、高坂君の優しさに触れてしまった今、もう、止まらなくなった。
高坂君の、
「それに、友達ならずっと一緒にいられるし」
と言う説得の言葉を僕は遮る。
「ちがう!」
僕は涙を拭いた。
「僕は、高坂君の特別になりたい。そして、高坂君は僕の特別になってほしい。だから、付き合ってほしい……そう思った。なのに……」
気持ちの整理がつかない。
つまりは、男同士だから。
だから付き合えないという。
でも、そんな事は最初から分かっていることだ。
僕が知りたいのは高坂君の気持ち。
「高坂君は、僕のことが嫌い?」
高坂君は顔を背ける。
「そんなこと……」
「もし、僕のことが嫌いなら、そう言って。そうすれば諦められるから」
「青山、お前……」
僕は目をそらさない。逃げない。
そうだ。ちゃんと振ってもらえれば、それでいいんだ。
いいよ。
嫌いっていってくれて……。
僕は受け入れられる。
高坂君のどんな言葉も。
「嫌い……ではないと思う。だからといって……」
「それじゃあ、諦めきれないよ!」
僕は叫んだ。
「僕は高坂君がしてほしいことは何だってする。できる。だから……」
「青山、お願いだから俺を困らせないでくれ……」
高坂君は首を振った。
しばらく間があった。
僕はうつむいていた。
高坂君は切り出す。
「わかったよ。お前が諦めないっていうんだったら、俺の言うことができたら、付き合ってやってもいい」
僕は高坂君を見る。
「もしも、授業中、オナニーをすることできたのなら、付き合うことを考えてもいい」
僕は耳を疑った。
授業中に?オナニー?
意地が悪い。
きっと、題材は何だっていいんだ。
無理難題を押し付けて、僕に諦めさせようとしたいだけなんだ。
それにしても、授業中にオナニーだなんて……。
「そんなこと、できるわけがない……」
悔しくて、唇を噛む。
もし、誰かに見られたら、学校中の笑いものだ。
それだけではない。きっと退学になる。
「ずるいよ……」
僕は、高坂君を睨みつけた。
悔し涙を流していたかもしれない。
高坂君は、僕の頭を撫でて言った。
「うん。ごめんな。だから、諦めてくれ」
高坂君は、優しく、そして残酷だ。
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