4 / 52

1-01-3 憧れの人(3)

朝のホームルームが終わり、僕は席に座ったまま、窓の外のさわやかな青空を眺めていた。 レースのカーテンが揺らめいている。 隣の席の高坂君は、昨日の事は無かったかのように澄まして、1時限目の教科書を机に準備している。 はっとした。 そういわれてみれば、入学以来ずっと高坂君のことを見つめていたかもしれない。 こうやって、何気なく、無意識に。 今、高坂君のことを見つめているように。 あからさまに見るのは気を付けていたはずだったけど、知らず知らずのうちに、高坂君の姿を目で追っていたんだ。 ふぅ。 天井を見上げる。 確かに、迷惑と言われればその通りだと思う。 ごめんね、高坂君。迷惑だったよね。 せっかく、高坂君とちゃんとした会話ができたのに……。 それが昨日の一件。 確かに、友達になるという提案は悪くはない。 少なくとも、今の状況よりは格段にいい。 でも、気づいてしまった。 やっぱり、高坂君の事が大好きだって事に。 この感情を抑えたまま、うやむやにして、学校生活を送るのは僕には到底できそうもない。 授業が始まった。 僕は、教科書を開き、ノートを広げた。 隣の席の高坂君は、僕のことなどまったく気にする様子もなく前を向いて授業を聞いている。 ちょっとは意識してくれているのだろうか? いや、本当に興味がないのかもしれない。 でも、いいんだ。 決めたことだから。 僕は、おもむろに、制服のズボンのポケットに手を入れた。 ゴソゴソと音を立てる。 布がすれる音だ。 きっと、高坂君には聞こえているはずだ……。 僕は、ペニスの位置を確認した。 ポケットからペニスをつかみ、触りやすい位置に寄せる。 ナイロン生地のすべすべ感で、布越しでも指の動きは伝わる。 最初は、先の方をゆっくりとなでる。 つまむように。 気持ちいい。 少しずつ大きくなっているのを感じる。 僕は、授業中にこんなことをして、そして感じているんだ。 僕はなんていやらしいんだろう。変態だ。 そう思うと、なぜか感じてしまう。ゾクゾクする。 すこし、息が荒くなる。 そこで、視線を感じた。 高坂君が、目を見開いて、こっちを見ている。 やっと、気づいてくれたか。 高坂君は、「何をやっているんだ。やめろよ」と、声に出さずに訴えかける。 僕は、「見ててよ」と口の形だけで答えた。 高坂君は明らかに狼狽している。 僕は満足だ。 その姿を見ることができて……。 僕は、ずっと考えていた。 高坂君は、どうして、僕を「嫌い」とはっきりと言わないのか。 そうすれば、否応なく簡単に僕をフレられるのに。 もしかしたら、うぬぼれかもしれないけど、僕のことを嫌いではないのかもしれない。 僕に嫌いと言うことに、すくなからず抵抗があるのかもしれない。 そうだといいな……。 高坂君の熱い視線。 恥ずかしいのと嬉しいのとで体が熱くなる。 ドキドキする。 高坂君、ちゃんと僕を見ててよ。 これからが本番なんだから! 僕は、ズボンのファスナーをゆっくりと下げる。 チリチリと音が出る。 でも、授業の先生の声と、黒板で削られるチョークの音、教科書をめくる音が、かろうじてそれを防いでくれた。 ズボンの中からペニスを取りだそうとする。でも、勃起しているから、引っかかる。 僕は強引に取り出そうとする。 ズボンの生地やファスナーの金属部分にペニスの敏感な部分が擦れる。 いたっ。 でも気持ちいい。 僕のペニスは高坂君に比べれば小さい。 でも、勃起すれば手のひらで覆うぐらいの大きさにはなる。 ペニスの先からは透明な汁が糸を引いている。 机の下だから前後の席からはかろうじて隠せているが、横の高坂君の方からは丸見えだ。 どう? 僕のオナニー。ちゃんと見ててよ。 高坂君は、誰かにばれていないか、キョロキョロと周りを気にする。 そして、僕の方を凝視する。 僕は、親指と人差し指で小さな輪をつくり、ペニスを囲むと上下に動かし始めた。 高坂君に見られていると思うと、余計興奮する。 高坂君の言った通り、ほら僕は授業中にオナニーをしているよ。 高坂君の言うことならなんだってできるんだから。 息がさらに荒くなる。 さすがに、これ以上は、声が出てしまう……。 僕は、ペニスを触っていない方の手で自分の口をふさいだ。 高坂君の焦ったような真剣な目。 僕の本気は伝わったはずだ。 ここで、射精してしまったら、さすがに、ただではすまないだろう。 でも、もういいや。 目を閉じて、高坂君にしごかれているイメージをする。 そんなに激しくしごかないで。高坂君。 だめ……いきそう。

ともだちにシェアしよう!