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1-01-4 憧れの人(4)
僕は、いってしまいそうになった。
その瞬間……。
高坂君は「先生、青山が体調がわるそうです!」と突然言った。
僕は焦って、両手で股間を抑える。
あっ、だめ……。
熱いものが込み上げる。
我慢出来ないよ。
ドピュ!
あぁ。
いってしまった……。
この危機的状況。
声には出てなかったと思う。
でも少なからず快感を覚えていた。
僕は変態だ。
「たしかに、おなか抱えて。腹痛か?」と先生は僕を見て言った。
そして高坂君に、「悪いが、高坂。青山を保健室につれていってやってくれ」と言った。
高坂君は席を立つと、僕の腕をとる。
僕は精子でぬるぬるした両手で、ペニスを隠しつつ、お腹が痛そうな振りをして、扉から教室の外にでた。
僕と高坂君は廊下に出るとすぐ、近くのトイレに入った。
授業中だから、誰もいない。
そして、僕はペニスをしまい、手を洗った。
僕の身支度がすむまで、高坂君はずっと僕の近くにいてくれた。
「どうして、こんなことをしたんだ。バカたれ!」
高坂君は本気で怒っている。
僕の両肩をギュッと掴んで怒鳴る。
「なんとかギリギリ誤魔化せたけど。ばれてたら、ただじゃすまされなかったぞ!」
「だって、高坂君がいけないんだ。高坂君が、授業中にオナニーすれば付き合ってくれるっていったんじゃないか!」
感情があふれてくる。
「僕は本気なんだ……」
僕は高坂君を真っ直ぐに見つめる。
「どうして、僕の気持ちをはぐらかすの? 僕を試すようなことをするの?」
高坂君が口を開ける前に続けた。
「僕を嫌いならキライって、なんで言ってくれないの! どうして……」
そこまで言うと僕は、涙が出てきた。
「僕が高坂君を好きな気持ち、嘘にはできないよ……」
涙が頬を伝わり、とめどなく流れる。
高坂君は、突然僕を抱きしめた。
えっ?
どうして?
僕は驚いて目を見開く。
でもすぐに、気持ちが安らぐのを感じた。
トクン、トクン……。
高坂君の心臓の音が聞こえる。
高坂君に抱かれているうちに、もやもやとした気持ちがすっと消えていく。
そして、自然のままに自分の体を高坂君に委ねた。
心地いい……。
高坂君は僕の耳元で優しくささやく。
「ごめん。そして、ありがとう。俺をそこまで好きでいてくれて」
高坂君は僕の頬に手を添えると、涙をぬぐった。
「はぐらかすようなことをした。それで、青山を傷つけた。あやまるよ。ごめん」
高坂君は頭を下げた。
そして、こう続けた。
「もしも、まだ俺と付き合いたいと思っていてくれるのなら、俺の方からもお願いする。頼む、付き合ってくれないか?」
高坂君は僕を見つめる。
僕の答えは最初から決まっている。
「うん!」
高坂君と僕は教室に戻ることにした。
まだ授業は終わってはいない。
帰り際に、高坂君は僕に言った。
「もう無茶なことはやらないでくれ。頼むから。心臓に悪い……」
高坂君は本当に度肝を抜かれたようだ。
僕は、クスクスと笑い、「わかった」と答えた。
そして僕は、気になっていたことを聞いた。
「ところで、高坂君。僕のことは、その、どう思っている?」
「どうって?」
高坂君は、明らかに動揺をしている。
「好きとか、嫌いとか」
僕は問い詰める。
「今、それ答える必要あるか?」
「もちろん、あるよ!」
僕がそう言うと、高坂君は渋々答えた。
「付き合うんだから。嫌いではない……」
「嫌いじゃないって、好きって事?」
「いいだろ。そんなの!」
高坂君は、僕と目を合わせず、そっぽを向いた。
明らかに照れている。
クスっ。
可愛い。
僕は、今はその答えだけで十分だと思った。
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