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初めての…(1)
__この世には性別が2つある__
父上にそう教えられたのはいつだったか…
名家に生まれて16年、高校2年生になる俺は、使用人が運転する始業式に向かう車の中で薬を手にしていた。
とある本能を抑えるための薬だ。
人間には、身体的な男女の性別の他に、ダイナミクスと呼ばれる性別がある。Dom とSub の違いだ。Domに生まれた人はSubをコントロールしたいという本能が、Subに生まれた人はDomにコントロールされたいという本能がある。その欲求を満たせなければ、自律神経が乱れたりなど、双方共に精神的なダメージがある。
世の中のダイナミクスを持つ人たちは、パートナーを作ってこの欲求を発散する。俺にはパートナーがいないため、欲求を抑えるための薬を飲んでいるのだ。
基本的にDomとSubに力の差はなく、世間的には平等だと言われている。が、その実状は違う。DomにはGlare という眼力のようなものを使うことが出来、それを浴びたSubは強制的に降参したくなるのだ。それがある以上、自らがSubだとバレようものならどんなDomに利用されるか分からない。そのため自然的に、上に立つ人間はDomの性質を持った者が多く、またSubであっても、抑制剤を用いてDomまたはNormal─ダイナミクスを持たない人─に偽る者が殆どだった。
俺が通っている高校も名家生まれが多いためか、DomやNormalの人間が殆どで、高校2年になった今でもSubを名乗る者に出会ったことはない。
俺の父上もDomだった。人間を支配したいなどという気持ちはないが、将来上に立つ人間として、持つべき性別だと思い込んでいた。
勿論俺もDomだろう。
そう信じて、小学校卒業と共に第二性別診断を受けた。
俺、立花皐月 はSubだった。
始業式は滞りなく進み、次は今期からの生徒会長の挨拶となった。去年1年間カナダにある姉妹校と交換留学をしていたというその人は、高校1年生の時─つまり皐月が入学する1年前─から優秀で教師からも生徒からも一目おかれていたらしい。
この学校では高校3年生が生徒会長を務めるため、今舞台上に上がった彼は今年は必ず生徒会長になるだろうと噂されていた。が、去年入学して1年しかこの学校で生活していない皐月は、その間留学に行っていたという次期生徒会長のことをそれほど凄い人であると認識していなかった。
舞台上で挨拶をする生徒会委員長その人が、舞台に立った瞬間から少し寒気がするような気がする。自分は舞台の下、他の生徒に混ざって話を聞いていた。少し首を上げて、早く終わらないかと話半分に耳を傾けていた。その舞台上にいる男と目が合うまでは___
脳のどこかでバチッと音がした気がした。
膝が震え、息が上がる。見上げた先で合った視線が外せない。心臓がバクバクと鳴り始め、徐々に屈んでいくようにして足に力が入らなくなる。
頭の中が真っ白になって、膝がかくっと折れたのを感じた瞬間には気を失っていた。
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