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短編集②此処から第74話 待ちぼうけ

とぅちゃ と かぁちゃは忙しい 還って来たと想ったら…… また……お家に還って来ない…… 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 淋しくて……涙が出る 流生は元気がなかった 保母さんが話し掛けても…… 俯いて……泣いていた 「………流生君 どうしたの?」 保母さんが声をかけると音弥が流生の前に出た 「おとたん ないーぶにゃの!」 何処で覚えたの……その英語…… 保母は苦笑した 太陽と大空も保母に 「りゅーちゃは」 「はーとぶりぇいくにゃの!」 と言った ハートブレイク……意味知ってる? 保母は目まいを覚えた 翔は流生を抱き締めると 「りゅーちゃ きゃまうな!」 と怒った 5人それぞれ個性がある でも5人は優しい 互いの兄妹を庇い生きてる 「早く元気になってね流生君」 翔は「らいじょうび!」 太陽は「かぁちゃと」 大空も「とぅちゃぎゃ」 音弥が「きゃえったらにゃおる!」と締め括った 保母は両親の不在を知る 流生は甘えん坊で両親が大好きだった 他の子も両親が大好きだけど、特に流生は甘えていた 両親も流生を可愛がり、他の子も愛した それが端から見ていて良く解った 早く還ると良いね そんな気休めの言葉なんて出なかった でも祈ろう 流生君達のご両親が 一日も早く帰ります様に 保母は祈った 帰宅時間になると流生は玄関を見ていた 他の子も玄関を見ていた お迎えに来たのは緑川一生、慎一兄妹 流生は淋しそうに俯いた 一生は流生に 「かじゅじゃ不服かよ?」 と抱き上げた 「かじゅ……」 「おめぇ達のとぅちゃとかぁちゃは闘ってんだ! そんな顔すんじゃねぇよ!」 一生は流生の頭を撫でた 「りゅーちゃ ぎゃまんちゅる!」 「おとたんもぎゃまんちゅる!」 「ちなも!ぎゃまんちゅる」 「きゃなも!ぎゃまんちゅる」 「かけゆ…ぎゃまんれきりゅ!」 5人はそれぞれに口にした 自分を戒めるみたいに口にした 「還ったら遊園地連れてって貰おうな」 一生が言うと子供達は瞳を輝かせた 「ちょれ!」 「ちゅてき!」 流生と音弥は喜んだ 他の子も楽しそうに笑った 待ちぼうけの日々だけど…… 還って来たら毎日楽しい だからガマン出来る…… 子供達を見て……一生と慎一は辛かった それでも耐える子供達は強い子だと 今更ながらに想った

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