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第95話 北斗

生まれつき足が悪い北斗は体育が出来なかった 皆とグランドを駆け回り遊びたい……想っていても……出来ないからやらなかった 迷惑……かけたくないから…… 足が悪いから……転けると… 和希や和真が心配して助けてくれる 和希と和真は大切な兄弟みたいな存在 何時も気に掛けてくれ……護ってくれる 僕だって…… 守られるばかりじゃなく守りたいんだ…… 父さんや飛鳥井の家族を守りたいんだ…… でも僕の足は…… 足手纏いにしかならない…… このままだと車椅子の生活になるかも…… と言われた時は父さんは悩み……苦しんだ でも歩ける様になる可能性にかけて手術をした 僕は今…… やっと自分の足で歩ける様になれたんだ 「北斗、学校はどうだ?」 「楽しいよ」 そう答えると、父さんは僕の頭を撫でてくれる 「無理するなよ 辛かったら何時も言いなさい」 抱き締めて…背中を撫でてくれる その腕に…甘えて…… 僕は父さんの子供で良かった……と想う 父さん…… 僕は貴方が大好きだよ…… 見掛けだけ優しい人間なら沢山見て来た だって僕は……生まれた瞬間に喋ったんだから…… 産まれる前の記憶もある 真っ赤な髪で生まれた僕は……角を持っていた 忌み嫌われた存在だった そんな僕を切り離して……北斗にしてくれたのは……飛鳥井康太 彼は僕に人生をくれた…… 何時死んでも良いと想ってた人生に… 光くれた 父さん…… 僕は……貴方の牧場の跡継ぎになる 貴方が遺した後を継ぐ だから元気な体躯が欲しかった 自分で歩ける足が欲しかった…… 僕は強くなるよ…… 父さん…… 貴方を守れる位に…… 父親参観日 父さんはスーツを着て来てくれたね 同級生は僕の父さんを見て 「若いな」 「格好いいな」 と言ってくれた 若いに決まってるよ…… 父さんはまだ20代なんだもん…… こんなに若いのに……僕の父さんで良いのか……不安になるよ 和希や和真の父親も若いね……と言われる 双子の様に似た容貌に……父親も双子なの? とよく聞かれる 和希や和真の方が……父さんに似ている そんな時は……僕は……何と言って良いのか解らなくなるんだ…… 和希と和真はそんな事を聞く友達を怒る 「北斗はお母さん似なんだよ!」 そう言うと「そのお母さん何処にいるんだよ?」と聞かれる…… 和希と和真は言葉に窮する…… 北斗のお母さんは見た事がないから…… だから北斗に変わって和希は泣く 「北斗のお母さんの事を言うな!」 と泣きながら…… 友達に食い付いて…怒る 先生まで出て来る騒ぎで…… 教師の佐野春彦が北斗を抱き上げた 「北斗のお母さんはこの世にはいない…… 北斗は自分のお母さんの顔を知らない そんな友達を揶揄して問いかける事がどれだけ北斗を傷付けているか知りなさい!」 と怒ってくれるのだ…… 「北斗、大丈夫か?」 佐野は心配そうに問い掛けた 佐野先生が大切なのは康太ちゃんなのは知っている 康太ちゃんを守る人達が僕達を護ってくれるんだって……解ってる 「大丈夫です……」 「北斗は父さん似だと先生は想う」 「似てないよ」 「お前の中には緑川一生の魂を受け継いでいる 似るのは容姿だけではない その意思や志……お前は父さんに似て頑固者だ」 「………佐野先生………」 「それて護るべき者には何を擲っても貫く……お前は一生の子だ! 誰が何を言っても放っておけ」 「はい……」 「足も治りつつある これからは鍛え上げてやる覚悟しておけ」 「はい!」 佐野は北斗の頭を撫でた そして和希や和真の頭も撫でた 「緑川和希、和真 お前も父さん似だな……」 和希は「康太ちゃんに言われる」と言い笑った 和真も「僕は父さん似と言うよりは母さんに似たかった……僕達を産んで死んでしまった母さんに似てれば……父さんは喜んだかも知れないのに……」と淋しそうに言った ジナル二次創作 前 しおりをはさむ 次 自分の作品 超 短編集 ② 第27章 北斗 小中大テキストサイズ ページ編集 佐野は三人の頭を撫でた 「良い子だ……」 そう言い佐野は三人から離れた 和希は北斗に「大丈夫?」と問い掛けた 「大丈夫だよ…」 和希は良かった……と北斗に抱き着いた 和真も「北斗……気にしなくても大丈夫だからね」と言った 北斗は二人を抱き締めた 「ありがとう和希……和真……」 この二人と同じ年に生まれて良かった それだけは想う 自分の人生に……こんなに大切な人を与えてくれてありがとう…… 北斗は二人を強く抱き締めた 学校帰り、和希と和真と一緒に校門を出ると 「北斗、和希、和真」と名前を呼ばれた 三人は振り返った すると慎一と一生が立っていた 和希は「かずくん!」と飛び付いた 和真も「父さん!」と慎一に甘えた 慎一は北斗に手を差し出した 「お帰り北斗」 「……慎一くん……ただいま」 一生も「北斗、お帰り!」と声を掛けてくれた 一生は北斗の手を繋いだ 慎一は和希と和真に手を引かれて歩いていた 仲良く歩いて帰る帰り道 北斗は本当に楽しいと想った 本当に幸せだと想った

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